【POINT.2】糖尿病予防を目的に、血糖値の自己測定を導入

廣田 有紀氏せいら調剤薬局


血糖値の変動を自分自身で体感

血糖コントロールのために内服薬服用中の患者さん、あるいはまだ薬物治療は行っていないけれど血糖値に不安のある患者さんを対象に、血糖自己測定(SMBG)を導入する取り組みも行っています。

私は、以前は病院薬剤師として勤務し、院内の糖尿病患者教室を担当していました。糖尿病の重症化予防のためには、血糖値を測定し食事と血糖値上昇の関係を患者さんご自身が意識することがとても重要です。そのため、血糖自己測定の指導を薬局で取り入れられないかと、その方法を模索していました。

そこで、実際に自分で血糖値を測ってみることからスタートしました。

まずは空腹時、食後30分、60分、90分、120分で測定。まず、空腹時測定については、当時の私は年齢の割には高めで、私より一回り年上の同僚薬剤師は、まったく問題なしという結果でした。

さらに、食後血糖値の測定では、同じ食事を同量、食べて、比較しました。その結果、私の血糖値推移は予想の範囲内だったのに対して、同僚は食後に大きく血糖値が跳ね上がり、食後に血糖が上昇しやすい傾向にあることがわかりました。

同じものを同じように食べても、血糖値の変動は個々に異なります。たとえ健康診断でヘモグロビンA1cや空腹時血糖値に問題がなくても、食後血糖値が高くなることもあります。食後高血糖は年齢とともに顕著になります。

この経験をきっかけに、これまで以上に「患者さんにも、食事によって血糖値が大きく変わることを知っていただきたい」と感じるようになりました。血糖値を測定することで自分の血糖上昇の傾向を把握できれば、糖尿病の発症予防や重症化予防に大きく貢献できると確信が持てたからです。

チームの一員として足並みをそろえる 独りよがりにならない取り組みを

導入にあたっては薬局内に血糖自己測定のポスターを掲示し、興味を持った患者さんを対象に説明するようにしました。

介入は、あくまで興味を持った人に対して、ニーズを把握してから情報提供するというスタンスです。押し付けではなく、患者ニーズに応じて「やってみよう」と思う方への支援を行っていくのがベストと感じています。

例えば、他の疾患で血液検査を受けた患者さんが、「血糖値が高めだと言われたけど、どうすればいいのかな」といった話をされることがあります。そうした時に「ご自身で血糖値を測ることができますよ」「このような食事をしたらどれくらい血糖値が上がるかなども把握できます」と紹介しています。

血糖値を自分で把握することのメリットは、「これを食べたから血糖値が上がるだろうな」と予測できるようになることです。糖尿病の発症や重症化の予防のために必要なことは、まずは自分自身の状態を知ってもらうこと。「今日はこれを食べ過ぎたから、今週は少し食事に気をつけよう」など、意識をむけてもらうことが大切です。

実際に測定した患者さんからは「自分は大丈夫と思っていたけれど、これを食べてから実際に測ってみたらこれだけあがっていた」など、自分の状態を知っていただくことに役立っていると思います。

ほかにも、「食事のパターンが変わった」「生活パターンに変化があった」という声も寄せられています。例えば、それまでは最初に炭水化物を食べていた方が、野菜類を食べてから炭水化物などを摂るようになった。あるいは、間食は糖質が少ないものを選ぶようになったなどです。少しの努力が血糖値によい変化を与えることがわかると、みなさんそれが励みになって継続しやすいようです。

血糖自己測定は、注射薬が処方されている患者さん、一部の妊娠中の患者さんについては、保険適応されますが、そのほかの患者さんの場合は、適応外(自費)となります。現在連携している医師は「疾病予防や悪化防止につながるのであれば、ひとつのツールとして導入してもいいのではないか」という方針なので、薬局でも積極的に患者さんに勧奨し、測定結果は医療機関でも見せられるよう伝えています。

地域医療におけるチームの一員として大切なことは、「独りよがりにならない取り組みを進めていくこと」だと思います。「チームで協働しながら1人の患者さんをケアしていく」――この視点があって初めて、薬剤師の専門性が生かせるのだと感じています。