【POINT.1】腎機能データをお薬手帳に記載し、腎機能低下を防止

廣田有紀 氏せいら調剤薬局

お薬手帳へのシール貼付で 整形外科の処方内容が変更

当薬局ではチーム医療をモットーとして、医師の処方意図や治療方針、他職種による指導内容を理解した上で患者支援に取り組んでいます。その一環として、腎機能データをお薬手帳に反映する試みを行っています。

熊本市は全国的に見ても人工透析者数の割合が高い状態にあり、熊本市は健康課題としてCKD(慢性腎臓病)対策に取り組んでいます。当薬局の応需処方箋の主たる発行医療機関の医師は糖尿病専門医で、糖尿病の合併症である腎症予防に力を入れています。医師と治療方針を共有するため、クリニックオープン当初から定期的にディスカッションを行っています。

その中で、急激に腎機能が低下する高齢患者のケースを複数経験しました。医師と共に原因を検討した結果、「併用薬のリスク」に辿り着きました。

そこで1カ月間、来局したすべての患者さんに、他医療機関から処方された薬やOTC薬を含めて、服用している全ての薬を聞き取り調査しました。併用薬の調査方法は主に次の3通りです。

  1. お薬手帳に貼付された情報で他科受診内容を確認
  2. お薬手帳に他科受診内容が貼付されていない場合は(薬剤師非常駐の院内処方など)、口頭で確認
  3. 市販薬の内容を口頭で確認

聞き取りの際には、患者さんが「ほかに薬は飲んでいない」と話しても、さらに「市販の痛み止めなども飲んでいませんか」と、具体的に質問するようにしました。一歩踏み込んだヒアリングによって、「そういえば、痛み止めを飲んでいる」と答える患者さんもみられ、正確な回答を引き出すことにつながりました。

調査の結果、腎機能が低下してNSAIDsを服用していた患者さんは、整形外科から処方されていたり、頭痛などの鎮痛のためにOTC薬を買い求めていたりしました。

そこで、お薬手帳に腎機能数値などを記載したシールを貼り、「必ず受診先の医療機関や、薬局やドラッグストアで見せてください」と患者さんに伝えて渡すようにしました。結果、整形外科からの処方で、腎機能に影響の少ない薬剤への変更がみられました。

この取り組みをきっかけに、連携している近隣の医師から、CKDの患者さんについて、腎機能や重症度ステージの情報をもらうようになりました。医師から情報を受け取った際にはCKDのステージを書いたシールをお薬手帳の表紙に貼り、さらに中面には腎機能の数値などを書いたシールを貼るようになりました。さらに、患者さんに対して「他の病院を受診する時は、必ずお薬手帳を見せてください」と改めてお伝えするようになりました。

薬剤師が関わるからこそできる 疾病の重症化を予防

この取り組みは2020年8月現在も継続しています。CKDシールをお薬手帳に貼付した患者さんについて、腎機能を考慮した処方に変更されることも少なからずあり、手ごたえを感じています。

CKDは自覚症状がないまま静かに進行するため、早期発見が重要です。初期に異常に気づくことができれば、CKDの進行を遅らせ、腎機能を維持することが可能です。複数の医療機関から薬が処方されている患者さんの薬物治療の安全性を確保することは、薬局・薬剤師が関わるからこそできる取り組みと言えます。

熊本市全体ではCKD対策が功を奏し、新規人工透析導入者および65歳未満の新規導入者は減りつつあります。当薬局の取り組みもこうしたアウトカムの一端を担うことができているのであれば、今後も継続して取り組んでいきたいと考えています。