患者さんに満足のいく体験を提供するポイント

患者さんの満足度が上がれば、それに伴って施設の収益性が上がるのか、について考えます。
患者満足度と収益性の関係を表したのが下の図ですが、その関係は単純に比例しているのではなく、S 字カーブを描きます。ある程度の満足度が得られても、収益性にはつながらず停滞する。さらに高い収益性につなげるためには、ネガティブな要素を潰すだけでは十分ではなく、より高い満足感を感じていただくことが必要になります。

【図:1】患者満足度と収益性

【図:1】患者満足度と収益性

では、患者さんに高い満足感をもたらすような体験とは、どのようなものでしょうか。ある事例を紹介します。米国セイラム病院の一人の看護師が、女性の末期がん患者さんの娘さんの結婚式を院内で行ったという事例です。牧師や楽器奏者などのボランティアを募り、わずか3日間で結婚式の準備や段取りを行ったといいます。末期がん患者の母親は、結婚式当日、駆けつけた友人や親族とともに娘の花嫁姿を見ることができ、「これで幸せにあの世へ行ける」と語ったそうです。

このセイラム病院のような事例に限らず、患者さんの予想や期待を超える体験を提供することで、患者さんの感情を揺さぶり、強くその記憶に刻み込ませることができるのです。患者さんが感情を揺さぶられ記憶に残すのは、すべて例外的な体験なのです。初めて受付をする、初めて診察を待つ、初めて支払いをするなど、患者さんの初めての体験は,いずれも例外的な体験になります。ただ、一度体験してしまうと、患者さんはそれを予想するようになるので、やがて患者さんは、それを通常の体験として処理するようになります。通常の体験が繰り返されると、患者さんの感情は、やがて快適感や安心感といったものに変化していきます。患者さんの体験とは、患者さんの記憶に刻まれた感情の質のことです。例外的な体験では予想を超える体験を提供する。また、通常の体験では予想通りの体験を提供する。患者さんの記憶にどのような感情を刻み込んでいくかを考えるとき、感情に焦点を当てて施策を統合することが、満足のいく体験を提供する際のポイントになります。

【図:2】例外的な体験と通常の体験の関係

【図:2】例外的な体験と通常の体験の関係

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