患者さんの視点でサービスの現状を洗い出す

「患者満足度アンケート」は、提供者側が、患者さんの満足度に影響を与えていると思っている要素を想定して、それらの項目の良し悪しを検証していきます。この方法には問題が2つあります。

(1)提供者が重要だと思っている要素が、必ずしも利用者にとって重要な要素とは限らない
(2)アンケートという形式からは、各要素について患者さんがどのように感じているのか、患者さん自身の気持ちを汲み取ることができない

そこで、補完的な手段として、“Clue Scan(クルースキャン)”というツールを使って、患者さんがどんな体験をし、どのような気持ちになっているのか、患者さんの視点で観察し、サービスの現状を洗い出していきます。
“Clue Scan” のベースにあるのは「感情が人間の行動を左右していて、五感に与えるさまざまな刺激が、その感情を生み出している」 という考え方です。 “Clue Scan” を使って、観察・抽出した「手がかり(Clue)」が五感を介してどのような感情を生み出しているかを、分類・整理・分析することで、患者満足度につながる隠れた要素とポイントを明らかにしていきます。

“Clue Scan” の手順は、次の3点となります。
(1)対象となる患者さんを想定する
(2)その患者さんが体験を通じてどんな気持ちになりたいのか、患者さんが期待している3つの重要な感情を書き出す
(3)その患者さんになったつもりで現場を観察し、手がかりを収集する

「手がかり」には、3つのタイプがあります。
【機能的手がかり】
製品やサービスの機能など、患者さんが意識的に評価する手がかり
【物理的手がかり】
見えるもの、匂い、音、素材感など、モノや環境に関して患者さんが意識的/無意識的に評価する手がかり
【人間的手がかり】
言葉遣い、声のトーン、表情、ボディランゲージなど、人に関して患者さんが意識的/無意識的に評価する手がかり

収集した「手がかり」を“Clue Scan”の専用キットである“Clue Scan”Card【図:1】を使って整理します。Cardを使うことによって,より具体的な形が見えてきます。
(1)手がかり1件につき1枚のCardを使い、タイトルを記入する
(2)どの五感を通じて受けた刺激か、視覚/聴覚/嗅覚/味覚/触覚から選ぶ
(3)その刺激によってどんな気持ちになったか、刺激が引き起こした感情を、“Clue Scan”Card左段の『「手がかり」のネガティブ/ポジティブの度合いのチェック』(エクスペリエンスプレファレンスモデル;【図:1b】)によって、ネガティブ/ニュートラル/ポジティブの3つのレベルでチェックする
(4)右側に、実際に体験したことを患者さんの視点で記述する

【図:1a】“Clue Scan”Card

【図:1a】クルースキャンカードの図

【図:1b】「手がかり」のネガティブ/ポジティブの度合いのチェック(エクスペリエンスプレファレンスモデル)

【図:1b】エクスペリエンスプレファレンスモデルの図

それぞれのクルーがネガティブな影響をもっているのか、ニュートラルなのか、良い影響をもっているのかを評価するモデル
・Negative Clues(ネガティブな手がかり):予想を下回るネガティブな体験は、顧客のスイッチや、悪い口コミのもとになる
・Neutral Clues(予想通りの手がかり):予想の範囲内の体験は、強い印象を与えず、そのままでは差別化にならない
・Positive Clues(ポジティブな手がかり):予想を超えるポジティブな体験は、もう一度体験したい、人に話したいと思わせる

具体的な手順としては,次のように分析を進めます。
(1)“Clue Scan”Cardを,「ネガティブクルー」(ネガティブな手がかり)、「ニュートラルクルー」(予想通りの手がかり)、「ポジティブクルー」(ポジティブな手がかり)のグループに分ける
(2)グループ毎に、ギャップ,つまり「患者さんが期待している3つの重要な感情」と「現状のサービスが患者さんにもたらしている感情」とのギャップを明らかにする
(3)取り除きたい感情、強化したい感情を共有する
(4)どの手がかりが患者さんの感情に大きな影響を与えているか特定する

“Clue Scan” で得られた結果と「患者満足度アンケート」の結果をつきあわせることで、患者さんの経験をより深く理解し、重要なポイントに焦点を当てることができるようになります。

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