【Web Excellent Pharmacy 第5回】Special - 地域に必要とされる薬局になるためにすべきこと

生出 泉太郎

日本薬剤師会相談役/宮城県薬剤師会顧問/おいで薬局 取締役会長

生出 泉太郎氏

今年に入り、OTC医薬品の取り扱いについて行政からの発信が増えている。スイッチOTCがなかなか進まないという問題はあるが、OTC医薬品の利用を促進する目的の「セルフメディケーション税制」は、2017年~2021年の期間限定で始まり今年で3年目となる。行政のOTC医薬品活用の推進について、今後ますます流れが本格化していくと予想される中、OTC医薬品の扱いについて現状の保険薬局ではまだまだ不十分と言わざるを得ない。これからの薬局におけるOTC医薬品に対する対応について、どの様な考え方を持ち、対策を行えばいいのか。薬局が将来あるべき姿に向かうための具体的なヒントを、日本薬剤師会相談役のおいで薬局 取締役会長の生出泉太郎氏に伺った。

セルフメディケーション推進 薬局機能の見直し〜モノからヒトへ〜

日本薬剤師会 薬局薬剤部会の副会長として、「薬剤師の将来ビジョン」「薬局のグランドデザイン中間とりまとめ」などに携わっていた生出氏は、現在の薬局におけるOTC医薬品の扱いについて、「基本的に、現状では顧客はOTC医薬品が必要となったときにドラッグストアで購入する方が多いと思います。薬局でOTC医薬品を買いたくても、品揃えが少なく買えない状況が長く続いてきました。しかし、諸外国と比べて調剤しかやらない薬局は日本だけ。ヨーロッパには医薬分業という言葉もありません。フランス、ドイツ、北欧などでは日本のいわゆる調剤薬局の形態とは全く異なります。また、OTC医薬品の区分についてはオーストラリアを参考にしました。今、日本は、高齢社会と少子化で若い世代が減り、団塊の世代が急増し平均寿命も伸びているので、行政は地域対応と薬局機能を大きく見直し、『モノからヒトへ』とこれまでの調剤業務を主とする薬局・薬剤師から、地域生活者への健康管理業務が求められるグローバルスタンダードの薬局へ方向転換をするように求めています。これまでのビジネスモデルから脱却して、時代の求めに応じた薬局に変わる必要があるのです」。

これから薬局が果たす役割はライフステージを通した管理・指導

地域対応と薬局機能の見直しから、「モノからヒトへ」と言っているが、生出氏は薬局を経営する中で、国は本当に現場を見ているのかと感じることがあるという。

「正直なことを言うと、当店でも面分業で色々な医療機関の処方せんを受けて、忙しく調剤をして、在宅に対応し、ジェネリック医薬品を推奨するなど、国の政策通りにやっていますが、毎年棚卸しの時には多額の廃棄薬剤が出るなど、赤字がかさむ一方です。店舗を何軒も持っている調剤チェーンだと上手く回せるかもしれないが、改正ごとに調剤報酬が引き下げられる状況で、個店で調剤報酬を主として経営をするのは非常に厳しい時代になってきています。いずれ、調剤報酬だけでは食べられなくなる時代を迎えるでしょう。行政は薬剤自己負担の引き上げについて改革方向性(案)などを出し医薬品とOTC医薬品とのバランス、リスクに応じた自己負担のなどの検討を実施するなど、OTC医薬品の推進策も出してきています。その前に薬局、薬剤師は何をするのかと考えると、我々にできることはOTC医薬品+サプリメントなどの販売ということになります」と生出氏は、自身の薬局を例として、現状と今後の在り方について話された。

図1:保険給付範囲の在り方の見直し (薬剤自己負担の引上げ)
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図1:保険給付範囲の在り方の見直し (薬剤自己負担の引上げ)

出典:令和時代の財政の在り方に関する建議 参考資料3より(令和元年6月19日財政制度等審議会)

OTC医薬品販売のために必要なのは、薬局の薬剤師がその人にぴったり合ったOTC医薬品を選ぶコンサルタントであり、カウンセラーであり、アドバイザーであること。

「目先の利益だけを考えていたら、絶対に患者さんは居付きません。常に患者さんに寄り添い、一緒に病気を治し、健康を維持していくことを薬局はどうお手伝いするのか。そのためのOTC医薬品、漢方薬、サプリメントの活用などにいかに注力していくかということになると思います」。

健康サポート薬局の届け出基準を満たすために、とりあえず在庫として48薬効群のOTC医薬品を置けばいいという考えでは、薬剤師もOTC医薬品の販売に結びつけていこうという意欲には繋がらない。

「私は以前、薬局はOTC医薬品を1000万円揃えれば後には引けなくなり、DMや販売促進活動にも力が入るようになると語ったことがあります。少々過激に聞こえる例えかもしれませんが、そのぐらいの覚悟を持たなければOTC医薬品は根付かないであろうというのが持論です」。

OTC医薬品の汎用品目は薬局の立地条件によって異なるため、周りの環境を鑑みながら取揃える必要があり、品目数ありきでないことを肝に銘じておく必要がある。

「例えば、当店のポリシーで睡眠改善薬は置きたくない、でも顧客のニーズがあり置かなくてはいけない。また、高齢者が多い街と若者が多い街の品揃えは異なるはずなのに、すべて一律というのは本来おかしなことだと思います」。

そこで必要なのは、自分で自分の顧客をどう創造していくか。顧客の健康相談に乗ってOTC医薬品やサプリメントを供給し、その人が罹患すれば院外処方せんを応需する。もし、入院して退院すれば、また院外処方せんを応需するという患者のライフステージに合わせて「かかりつけ薬局」として関わっていくこと。

「単にOTC医薬品を置けばいいというのではなく、漢方薬やサプリメントを置くにもテーマが必要となります。あそこの薬局に行けば皮膚病のことなら何でも相談できるとか、婦人科系の相談を得意としているなど、特化することが強みになるのです」。

図2:ライフステージにおける患者と薬剤師・薬局のかかわり(イメージ)
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図2:ライフステージにおける患者と薬剤師・薬局のかかわり(イメージ)

出典:「平成30年度診療報酬改定の概要(調剤)」(厚生労働省)

自分の薬局をどのような薬局にしたいのか?将来像を明確にする

自分の薬局をどのようにしたいのか、想いがあるか?自店の10年後、20年後の将来像は明確か。そう生出氏は問いかけます。

図3:自店の10年後、20年後の将来像は
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図3:自店の10年後、20年後の将来像は

「今の自店の強みは何でしょう。現在の顧客層は。将来顧客にしたい層は。そこからビジョンを明確にし、ビジョン実現のため、また生き残りのため、何をするのか戦略を立てることが大切なのです」とおいで薬局の事例を挙げた。

社是・社訓・モットーは「クスリは必要な時に必要な量だけ」「いらないものはいらない」「相談だけでももちろんオーケー」。重点方針・施策は、面での処方せん応需を基本として、OTC医薬品・漢方薬販売にあたってはカウンセリングを重視。加えて季節ごとのイベント開催によりアメニティーの要素も盛り込む(薬局の多様性)としている。

「近所に住まいや職場があっても、一度も来局されたことがない方がいます。その方たちに当薬局はこんな雰囲気の薬局で、店主はこの人で、こんな人たちが働いていてということを気軽に見てもらうためにイベントを2~3月に1度、開催しています。イベントでは「基本の酵素みそ作りセミナー」・「季節の養生セミナー」・「セルフお灸」など、全て初心者のための講座とし、物販は行いません。回を重ねるうちにお客様からアートセラピーや麹を使った健康法のセミナーをやりたいという申し出もあり、これらも行っています」。

経営戦略には、誰に(市場の範囲)、何を(顧客のニーズ)、何で(薬局の強み=提供できるサービス)を考えることが必要とされる。おいで薬局は、誰に=「オフィス街に立地しているのでサラリーマンとOLが対象」・何を=「自分の訴えを十分に聞いてほしい・最新の情報やモノを伝達・販売してほしい・自分にだけに当てはまるものを選択・アドバイスしてほしい」・何で=「スタッフ全員が薬剤師と登録販売者・国際中医師(A級)が常駐している・健康サポート薬局・検体測定室設置・長時間営業」を実践している。

「顧客から選ばれる薬局になるためには立地条件もありますが、将来、顧客から選ばれるために加えるべきものとして、スタッフ全員が顧客に満足を与える対応をする。薬局を調剤・健康相談などの医療に関連することで来るところだけではなく、地域の交流サロンなどとして活用していただき、いつでも来てくださいという雰囲気づくりを作ることが大事です」。

薬局と大型店のドラッグストアが違うのは不特定多数のお客様ではなく、特定少数の支持者の輪をいかにして増やしていくかが重要なポイントとなる。

「それを考えると、やはりOTC医薬品については置くことからはじめるというのは無理な話で、まずは自分たちの強みは何かを分析し、地域に必要とされる店づくりとして、何が必要なのかということを考えていく。来た人の心を掴んで離さないような仕掛けを作らなくてはなりません。ロイヤルカスタマーを増やしていくことが大前提。薬局は、説明することが点数に結びつき利益となってきたので、薬剤師側が話すことが多く、患者さんから話を聞くことは少ないのが現状です。それを逆にするには、どうやって言葉を引き出すのかを考える。その上で顧客・患者は、OTC医薬品も漢方薬も処方せんも一つの薬局で相談するということに繋がるのだと思います」。

ドラッグストアとは補い合い、連携していくべき

経済産業省は、全国1万7000店あるドラッグストアのネットワークを活用すれば、運動指導や栄養指導、予防・検診等、公的保険外のサービスや商品を適切に提供することも求められるのではないかと、医療費削減の拠点となる業態として着目している。

図4:目指すべき健康長寿社会像とドラッグストアの活用
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図4:目指すべき健康長寿社会像とドラッグストアの活用

出典:「セルフメディケーション推進に向けたドラッグストアのあり方に関する研究会(第2回)‐配布資料」(経済産業省)

薬局とドラッグストアについて、生出氏はそれぞれの役割があると考えている。

「大型店で調剤をやっているところはありますが、基本的にはドラッグストアの現状は物販がメインであり、調剤室はあるが薬剤師と健康相談をできるような店舗はまだ少ない。それに対して保険薬局数は約6万弱*1あり、その数を大きく上回っている。経済産業省の医療費削減の拠点はドラッグストアと言われている段階でどうなんだろうと、街の薬局は改めて考える必要があるのではないでしょうか」。

しかしながら、薬局とドラッグストアは対立をするのではなく、互いの得意分野を共有し、補い合う関係を作れば、そこに住んでいる生活者の方々は一番良い医療サービスが受けられるはずと生出氏は提案する。「ドラッグストアにはスペースがあるので健康イベントの開催などに適していますし、そこに地域の薬局が連携するなど色々な方策が考えられます。ドラッグストアが得意とする分野で、私がこれから担ってほしいと期待するのは介護食の販売です。薬局は管理栄養士を雇用しながら栄養相談に対応していく。そして、できれば医療用医薬品は互いに融通し合える仲になればすごくいいと思います」。

製薬会社にもOTC医薬品に力を入れて取り組んでしてほしい

さらに生出氏は、製薬会社側がOTC医薬品の開発・販売に力を入れなくなってきているのではないかと現状を話す。

「昔は、各製薬会社がOTC医薬品のテレビCMを多く流していましたが、今は感冒薬くらいでほとんど見ることがなくなりました。商品を出してもドラッグストアがすぐにPB商品を出してしまうのでブランディングが難しく、出しても売れないのではないかとおよび腰になっているのも要因だと思います。以前は、製薬会社が週に1回は情報を持って来てくれましたし、医師を招いて店頭で見られる水虫と湿疹の違いについてなど、製薬会社主催の勉強会も盛んに行われていました。今は、それがなくなり、一定額を購入しないと商品も入ってこない。行政がOTC医薬品を活用するように税制まで創設し推進しようと取り組む中で、製薬会社の動きは逆なのです。製薬会社も一緒に頑張ってもらわないとOTC医薬品の活用は進んでいかないと思います」。

若手薬剤師のサラリーマン化に危惧

また、若い薬剤師に独立志向がないことも危惧している生出氏。「昔は、家業の薬局を継ぐために薬科大学に入るケースが多かったので、限られた人だけが薬剤師になっていたと思います。しかし、今は約30万人いる届出薬剤師の中で、開設者は約17,000人しかいません*2。安定した生活を保ちながら、生涯学習などの勉強もある程度できて、週休2日・休暇が多いという企業に勤務し、キャリアアップをしてもっと良い企業に転職するというビジョンを持つ人が多い。この流れを断ち切り、独立し地域密着の薬局開設を目指す薬剤師がもっと多くならなければモチベーションは上がらないと思います。薬局の薬剤師としてそこに定住し、地域に目を向けなければ、患者のためにOTC医薬品を展開していこうという考えはなかなか生まれない。さらに言えば、街に薬局が1軒あってもその周りの店も元気にならなければ、誰も街にやって来ません。私は商店会の会長もやり、地域の活性化にも力を入れています」。

様々な分野が力を合わせて努力していくことが必要

薬学教育においても、多くの大学で「OTC医薬品学」というのはありません。あったとしても選択科目にとどまり、本当にOTC医薬品はないがしろにされている。実務実習先でも、OTC医薬品に触れる機会が少ないというのが現状です。これからは、様々な分野が力を合わせて努力しなければ、OTC医薬品の活用は実現できないでしょう。

薬局は、近い将来、保険調剤だけで経営ができなくなることを意識して、早く業態展開をする必要があります。そして、地域の中で薬局・薬剤師が存在していることの認知度を上げていかに社会に早く気づかせるか。国が策をとる前に薬局、薬剤師の皆さんが今、変わる必要があるのです。

  1. 「平成29年度の衛生行政報告例の概況」(厚生労働省)
  2. 「平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」(厚生労働省)