【Web Excellent Pharmacy 第9回】Professional - LINEを使ったコミュニケーションで効率的な患者フォローを実現

鎌田 悠

イントロン株式会社/事業本部ITシステム部 部長代理

鎌田 悠氏

「患者のための薬局ビジョン」では、ICTも活用し、患者の服薬情報の一元的・継続的な把握と薬学的管理・指導を実施するとされている。

イントロン株式会社では、電話やメールよりも手軽にメッセージのやり取りができる、LINEを使った投薬後の患者フォローシステムを導入した。LINEを使うことで薬剤師と患者が互いに都合の良い時間を使ってやりとりすることが可能になり、患者とのコミュニケーションがスムーズになった。LINE登録後は、薬局から有用な情報を提供することも可能となるため、今後は地域の中での薬局・薬剤師の役割を拡めるツールとしても使っていきたいという。

LINEを使った投薬後フォローシステムの導入、運用、今後の課題などについてイントロン株式会社のITシステム部 鎌田 悠氏に話を伺った。

ICTを使った効率的なコミュニケーションで地域の相談窓口に

LINE投薬後フォローシステム(以後LINEシステム)を導入した、イントロン株式会社事業本部ITシステム部 部長代理の鎌田 悠氏は、「“患者のための薬局ビジョン”のなかで“患者本位の医薬分業の実現”が謳われています。薬局が地域住民の病気の治療から予防、健康相談まで請け負うことが求められているのです。しかし、病気になって医療機関から処方せんをもらい、初めて調剤薬局を訪れるという流れが染みついてしまっている現状のなかで、地域の相談窓口というその役割を果たすには、地域住民とより密なコミュニケーションをとる必要があります。“患者のための薬局ビジョン”の中でも明記されている、ICTを活用して効率的に、それを実現できる方法を探していました」と話す。

そして、LINEを使って薬局と患者をつなぐシステムを知り、「これであればより個別に対応していけそうだ」と、社内でシステム導入についての検討を重ね、2店舗で試験的に導入することとなった。

図1:患者のための薬局ビジョン
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図1:患者のための薬局ビジョン

患者に「お友達登録」してもらい投薬後をフォロー

図2:LINE投薬後フォローシステム
図2:LINE投薬後フォローシステム

LINEを使った投薬後の自動フォローの仕組みは、患者に薬局のLINEアカウントを友達登録してもらい、その後、薬剤師が処方せんの内容を電子お薬手帳に登録すると、そのデータをもとに、患者の服薬期間が自動判定され、初日・中間日・最終日にメッセージが自動送信されることになる。

メッセージの内容は、たとえば初日には「来局ありがとうございます。お薬についてわからないことは薬剤師におたずねください」、中間日には「お薬はきちんと飲めていますか?気になる症状がありましたら、薬剤師にご相談ください」、最終日には「まもなくお薬がなくなります。早めに受診をお願いします」など、患者に合わせて服薬をフォローする内容が送信される。

患者からの質問もLINEで受け付けることが出来る。メッセージ内容は薬局内の端末に表示され、投薬をした薬剤師が対応することとなっているが、質問内容・返信内容についてすべての薬剤師が見ることができる。

返信率は思った以上、問題あり・問題なしの把握が容易に

LINEシステム導入にあたり、先行導入した2店舗にて、来局者100人に「薬局薬剤師に求めていること」をアンケートしてみた。すると、「適切な薬剤使用」が83人、「副作用の発見」が76人、「残薬の管理」が67人という結果だった。

この結果を検証すると、患者さんが望んでいることは、“患者のための薬局ビジョン”のなかで求められていることと一致していた。

アンケートに答えてくれた患者の中から、LINEを使用している50人にLINEの友達登録をお願いしたところ、その内30人が登録してくれた。

図3:運用後の利用患者と薬剤師へのアンケート
図3:運用後の利用患者と薬剤師へのアンケート

そして、登録してくれた30人の患者に投薬後、①副作用などの問題はありますか?②症状について困っていることはありますか?③飲み忘れなく服用できていますか?――の3つの質問を送ったところ、25人の患者から1つ以上の返信が来たという。

返信内容は、副作用については25人中23人が問題なしという返信だったが、2人から「これは薬の副作用でしょうか」という問い合わせが来た。また、飲み忘れについての質問には、23人から返信があり、その内1人が「子どもが粉薬を吐き出してしまい、うまく飲ませられない」という返信が来た。

これらの返信については、投薬した薬剤師が対応してすべて解決をしている。

より多くの問題を拾い上げることが可能に

LINEシステム導入について、「運用への課題として、どれくらいの患者さんがLINEを使われているのか、薬剤師からの依頼で患者さんが友達登録をしていただけるのかを心配していましたが、登録率の高さにびっくりしました。そもそも、コミュニケーションツールとしてLINEをメインで使っている人が多くなっていることが受け入れられた要因だと考えます。LINEのほうが電話やメールより手軽で、相手の都合にも合わせられて使い勝手がいいと感じました」鎌田氏は導入の感触をそのように話す。

これまでは、薬剤師が気になった患者に個別に電話するなどの方法を取っていたという。「私は、薬剤師として薬局に勤務していたのですが、電話で対応するのは調剤業務の空いた時間などとなり時間的制約もありますので、すべての患者さんをフォローしていくことは難しいと感じていました。そもそも、最近は電話しても出ていただけなかったり、患者さんが忙しい時には話しができないことも多く、適切な情報の授受も困難な時がありました」。

また、「電話ではその場で返答しないといけない場面もありますが、LINEシステムでは時間的な余裕が生まれて、しっかり調べたり、ほかの薬剤師に相談してから返信することができます。気持ちの余裕が生まれ、返答の質もあがりました」と話す。

「患者さんからは、『電話だと記録として残らないけど、LINEなら文字で残るのであとで読み返せるのがいい』という意見や、『忙しいから悪いなと思って相談できなかったけど、LINEだと気軽に相談できていいわね』と話してくださった年配の患者さんもいらっしゃいました」と鎌田氏は患者の反応を話す。

もちろんLINEシステムですべてが完結するわけではない。相談内容によっては電話や窓口でのフォローが必要になることもある。「LINEシステムで網羅的に質問を投げかけ、返していただいた返信を見て、必要な人には個別に対応するということができるようになりました。これまでは薬剤師から見て“問題を抱えた人”にアプローチしていましたが、抱えている問題が見えなかったこともあったと思います。LINEで患者さんからの返事が返ってくることで問題が可視化され、より多くの問題を拾い上げられるようになったのではないかと思います」。

課題は返信の確実性、内容の信頼性の担保

一方で、課題も見えてきた。まず、患者からの質問に確実に対応することが求められる。

「基本的には投薬した薬剤師が答えることになっています。患者さんからのLINEシステムでの返信は、着信するとその通知が薬局の管理画面トップに表示され、担当者が見て返信すれば通知は消えます。また、問題がある場合は色付けされて表示されるようになっています。管理画面は、薬局内のすべての端末でも見ることができますので、管理画面さえ見てくれたら返信を見逃すことはないですが、それを業務の中に組み込むことが課題です。日常業務のルーチンのなかで見てもらえるように組み込んでいけたらと思っています」。

また、記録に残るものだけに、内容の信頼性が問われることとなる。返信内容については、これまで以上に慎重になることが求められる。

「ただ、電話よりも時間的制約が少ない分、より情報を精査して発信することができます。より質の高い情報が発信をしていけるとも考えられます」。

システム運用にあたっては、マニュアルを作成し地域のブロック長を集めた講習会で説明した後、ブロック長から各店舗の薬剤師に伝えるようにしている。

「特に、個人情報の取り扱い、セキュリティについては厳重に管理するように伝えています。通信環境については、セキュリティの厳しいものを使っていますが、一番心配なのは外部から持ち込んだUSBなどを使って情報を持ち出したりすること。そこは厳しく教育しています。また、患者さんにも、LINEアカウントを人に話さないように伝えるなど、情報セキュリティ面には注意が必要ですね」。

LINEを薬局の役割を知ってもらうためのツールへ

鎌田氏の所属するイントロン株式会社では、2019年2月に2店舗で先行導入後、2019年11月末までに全店舗で導入を完了した。

今後は、患者との友達登録をどのように増やしていくのかが課題となる。「そのためには、声かけの工夫や、患者さんのメリットをどう表現していくかがポイントだと思っています。メリットを患者さんに伝える資料も作っていきたい」と話す。

LINEシステムは、情報発信のツールとして薬局から多くの情報を提供ですることも出来る。「例えば、花粉の飛散状況やインフルエンザの流行状況などの地域の健康情報、薬局で行う健康フェアなどのイベントや、国からの公的な情報なども発信していきたいと思っています。自分でその情報は取りにいかないけれど、来たら便利だ、気になるという情報が薬局から流れてくれば、こんな付加価値もあるのだと認識してもらえます。また、薬局で提供できるサービスについても伝えていき、地域での薬局の役割を知っていただくきっかけにもしたいと考えています」。

ICTを活用し薬局・薬剤師の役割を伝えて欲しい

LINEシステム運用には、大きなインフラ整備は必要なく、LINE登録用のデバイスとセキュリティに配慮した通信設備があればよい。

一番のハードルは、LINEへの友達登録だが、「地域密着している個店の薬局のほうが導入をしやすいと思います。普段から話が出来ている患者さんであれば、メリットを話すことで友達登録のハードルが下がるのではないでしょうか。そしてLINEシステムを使って効率的に情報を発信、受信していき“患者のための薬局ビジョン”で求められている薬局の姿につなげることができると思っています。今、一部では薬局不要論などの声もあがっていますが、ICTを活用し業務を効率化して、対人業務を充実させ、薬剤師が求められている役割を果たしていくことで、薬局・薬剤師の存在価値が認められていくと考えています」と鎌田氏はICTの活用と薬局・薬剤師の今後について話された。