【Web Excellent Pharmacy 第6回】Education - 薬剤師の職能向上のために 薬剤師生涯学習達成度確認試験のこれまでとこれから

豊島 聰

公益社団法人日本薬剤師研修センター/理事長

豊島 聰氏

薬剤師生涯学習達成度確認試験は、薬剤師の自主的な研修・学習の達成度を客観的に評価することを目的として行われる試験である。

2016年7月にスタートした薬剤師生涯学習達成度確認試験は、今年(2019年)7月、第4回が実施された。

第1回から第4回までの薬剤師生涯学習達成度確認試験を振り返って、試験の結果と今後の薬剤師のあり方にも関わる薬剤師生涯学習達成度確認試験の意義と、見えてきた課題などについてについて、日本薬剤師研修センター理事長の豊島 聰氏に話をうかがった。

目的は自己研鑚の客観的評価

第1回の薬剤師生涯学習達成度確認試験(以下、達成度確認試験)が行われたのは、2016年7月のことだった。そして今年(2019年)7月に、全国7会場で第4回が実施された。達成度確認試験は、日本薬剤師研修センターが実施する、薬剤師の自主的な研修・学習の達成度を客観的に評価することを目的として行われる試験である。

なぜ、自己研鑽の客観的評価が必要なのか。豊島氏は次のように説明する。

「薬剤師の資格には、免許更新制度が設けられていません。しかし、日進月歩の医療水準に追いついていくためには日々の自己研鑽が必要です。しかしながら、自分ひとりで学習しているなかで、自身の実力の把握は難しいと考えます。そこで、薬剤師の実力を客観的に判断する試験を行い、日々の研鑽の成果を保障しましょうということで、この達成度確認試験が始まったのです」。

その目的のために、達成度確認試験のあり方については、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、日本医療薬学会、日本薬学会、および日本薬剤師研修センターの5団体が共に検討した。

また、毎年1回行われる試験には、日本医療薬学会の認定試験の問題が使われている。「病院薬剤師、薬局薬剤師、そして製薬企業に所属している薬剤師など、幅広く活動する薬剤師の知識をカバーするために、医療薬学会の試験問題が適当だと考えました」。

自身の実力を達成度確認試験で把握し、さらに質の高い生涯学習に取り組んで行って欲しい。そうした思いでこの試験は開始されたのである。

自己研鑚している薬剤師にはぜひ受験して欲しい

達成度確認試験は、任意の試験である。薬剤師の生涯学習は本来自己研鑽なので、必ずしも受験しなければならない類いのものではないが、達成度確認試験の位置付けを「生涯学習は、自己評価をしながら、さらに必要な学習に取り組むものですが、達成度確認試験は、自己の生涯学習の状況について客観的な評価を受けてみたいと考える方に受けていただきたいと考えています」と豊島氏は話す。

受験資格は、①薬剤師免許取得後5年以上であること②所属する団体ごとに別に定める要件となっている。たとえばJPALS(日本薬剤師会生涯学習支援システム)では、「クリニカルラダーレベル5であり、かつレベル5に昇格後1年を経過した者」となっている。日本薬剤師研修センターの研修認定薬剤師では、“研修認定薬剤師の更新を1回以上行なっている者”が要件とされていて、かなり高いレベルの薬剤師が受験することを想定している。

表1:薬剤師生涯学習達成度確認試験の受験資格

表1:薬剤師生涯学習達成度確認試験の受験資格

豊島氏は、この試験を通じて「病院薬剤師であれ、薬局薬剤師であれ、地域のリーダーとなるべき薬剤師を育てたい」と話す。だからこそ自己研鑚に励み、地域のリーダーになろうと考える薬剤師こそ、ぜひこの試験を受けて、自身の実力を試してもらいたいと要望しているのだ。

かかりつけ薬剤師選択の目印にもしたい

また、「患者や生活者などに対して、薬剤師を選ぶときの判断基準にもしたいという思いもある」と豊島氏は言う。

「今、薬剤師に求められているのは、地域住民に信頼され、相談される対象であることです。ですが、患者さんが信頼できる薬剤師を探そうとしたときに、それを客観的に判断するための目印がありません。今、目の前にいる薬剤師がどのくらい勉強していて、どのくらいの実力をもっているのか、患者さんにはわからないのです」。だから、薬剤師の実力を患者さんに保障するための目印となるよう育てていきたいとも話す。

受験者増が一番の課題

2016年の第1回から2019年の第4回までの試験を終えて、豊島氏に試験結果を振り返っていただいた。

第4回までの合計受験者数は1427名、合格率は39.2%だった。

表2:薬剤師生涯学習達成度確認試験合格者数

表2:薬剤師生涯学習達成度確認試験合格者数

この合格率について、豊島氏は「出題の分野・レベルなどの試験問題に関する情報がなにも無いなかで、受験に取り組んだ結果としては、この合格率はなかなかではないかと思っている」と評価する。かたや、課題も見えてきた。

一番の課題は、当初の予定より受験人数が伸び悩んでいる点だ。これに関しては、「受験のインセンティブが非常に漠然としていることが原因ではないか」と推察する。

達成度試験に合格すると、日本薬剤師会のJPALSのレベルが5から6に上がる。目に見えるインセンティブとしてはそれくらいだ。そのため、今後はさらに受験者のインセンティブにつながることを考えて行きたいと話す。

その1つが、達成度確認試験に合格した場合の認定証のなかに「○○薬剤師と称することを認める」といった、一種の称号のような文言を入れることだ。「認定証を薬局に掲示しておけば、この薬剤師は生涯学習に取り組み高いレベルの試験に合格していると、患者に示せるような目印にしたいと考えています」。

そして、「現在は日本医療薬学会の認定試験の問題が使われていることもあり、試験問題をオープンにできていないが、今後は日本医療薬学会などの関連団体と相談し、試験問題や試験結果などについて開示できる情報を検討していきたい」と話す。

第6回目の試験までにこうした方策を打ち出すことで、受験者の増加を目指したいと語った。

義務化された自己診断表で自分の足りない学習を自己評価

ところで、日本薬剤師研修センターでは、研修認定薬剤師制度の研修認定の申請時に、「生涯学習自己診断表(薬剤師生涯研修の指標項目)」の提出を義務付けている。これは、2019年から始まったものである。

表3:生涯学習自己診断表(薬剤師生涯研修の指標項目)
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表3:生涯学習自己診断表(薬剤師生涯研修の指標項目)

自己診断表とは、26項目の研修内容について、業務上の必要度を10点満点で評価、次いで自身の現状達成度も10点満点で評価し、その差を自己学習必要度として判定するというもの。

前述したように、日本の薬剤師免許は更新制ではなく、研修も義務化されていない。だから、「かかりつけ薬剤師として十分な能力を養い、職能を果たして行くためには、自ら学習するべき内容を選択し、学習した内容を整理確認することにより学習成果を向上させるための自己診断が必須である」という考えから実施されている。

自己診断表は、客観的評価である達成度確認試験と異なり、あくまでも自分の現状と向き合うことが目的である。「自分に甘く評価することもできますが、それでは意味がありません。自己診断表が研修認定の可否につながることはありません。自分が何を学んできたのか、どの分野の学習が足りないのか、その把握のためにぜひ、使って欲しい」と豊島氏は訴える。

薬剤師研修センターには、研修認定薬剤師制度の研修認定の申請に義務付けられたことで多くの自己診断表が集まっているという。「細かい分析はこれからになりますが、第一線で活動している薬剤師が、どの分野の学習が足りていないと感じているのか、そうしたことを抽出していきたい」と述べる。

そのうえで、学習が足りない分野について、薬剤師研修センターのe-ラーニングや都道府県薬剤師会の研修協議会にその分野の研修を依頼するなど、細かいフィードバックをしていきたいという。

職能を認められるために薬剤師のあり方が問われている

現在の薬科大学・薬学部の数と在籍する学生数を考えると、今後輩出される薬剤師は確実に増加する。そのなかで生き残っていくにはどうしたらよいのかというのは直面する課題である。だがその前に、「薬剤師という職能が、医療や地域住民に本当に必要だと認識されることこそが、重要な課題です」と豊島氏は指摘する。

「だからこそ、今個々の薬剤師は自分で考えて職能をアップしていく必要があります。達成度確認試験も、自己診断表も、そのために活用して欲しい」。豊島氏は、そう呼びかけた。