【Web Excellent Pharmacy 第4回】Education - リウマチ性疾患の最新・薬物療法を学び 医療連携によるトータルケアで患者をサポート

川合 眞一

東邦大学/名誉教授

東邦大学 医学部炎症・疼痛制御学講座/教授(寄付講座)

川合 眞一氏

公益社団法人日本リウマチ財団はリウマチ性疾患の医療・ケアの質の向上を目的に多職種による医療連携と協働を大きな柱とする「リウマチ専門職制度」を推進している。その中の一つ、平成26年に発足した「日本リウマチ財団リウマチ登録薬剤師」は、医療機関、薬局でリウマチ性疾患の薬学的管理指導に従事している薬剤師等を対象に、リウマチ性疾患の薬物療法に精通した薬剤師を育成し、よりよい医療を提供するため、同財団が認定している資格だ。

現在、529名の薬剤師が登録(2019年4月現在)。薬剤師の活躍に大きな期待を寄せているという、同財団理事で東邦大学名誉教授の川合眞一氏にお話を伺った。

地域による格差のない治療を提供するため、登録医制度を発足

日本リウマチ財団は発足時から種々の施策を、リウマチを中心とするリウマチ性疾患に対して行ってきた。その施策の核である「リウマチ専門職制度」は、昭和61年に発足した「日本リウマチ財団登録医制度」が始まりであった。川合氏は、専門医ではなく、“登録医”として制度を作ったことを次のように語る。

「日本リウマチ学会認定のリウマチ専門医は約4,900人いるのですが、それでも全国どの地域にもいるとは限りません。しかし、関節リウマチを代表とするリウマチ性疾患の患者さんは広く全国にいらっしゃるし、必ずしも専門医に受診できる訳ではありません。登録医は、現場で頑張ってリウマチ性疾患患者を診ておられる医師に財団に登録していただくことにより、最新の情報を財団から提供するという目的で作った制度です。登録によってより積極的にリウマチ診療に携わっていただけるということもあり、間口を広げる意味で登録制にしたのですが、かつては専門医を取る前提で登録が必要であった時代もあり、制度としては大変長い歴史があります」。

平成22年度には、「日本リウマチ財団登録リウマチケア看護師」制度も発足した。

図1:日本リウマチ財団リウマチ専門職制度
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図1:日本リウマチ財団リウマチ専門職制度

登録薬剤師制度ができた背景には、バイオ医療普及が大きく関係

医療機関、薬局でリウマチ性疾患の薬学的管理指導に従事している薬剤師等を対象とした「日本リウマチ財団リウマチ登録薬剤師」が発足したのは平成26年。

登録医に続き、財団がケア看護師と薬剤師の登録制度を作った背景には、2003年に生物学的製剤であるインフリキシマブの登場から、関節リウマチの治療が大きく進歩し、医療現場の状況が激変したことが関係しているという。

「私が医師になった1977年当時は本当に関節リウマチのよい治療がなかった。昔はNSAIDsからはじめて抗リウマチ薬・ステロイドなどへ段階的に上げていって炎症症状を少しでも良くするというのが治療の目標で、本格的に関節の破壊変形、身体障害を止めることはできませんでした。1999年に関節リウマチに対してメトトレキサートが承認されたことで、まず大きく変わりましたが、さらに2003年から生物学的製剤が登場し、治療の目標は抗炎症のみならず関節破壊の抑制へと変化しました。今では、生物学的製剤は8種類もあり、数種類のバイオシミラーも加わって積極的に使用されています。これらは非常に良く効くので、新たに発症した患者さんは関節破壊・変形と、それに伴う身体障害の進行をかなりの程度抑えられるようになりました」。

しかし、その一方、生物学的製剤はリスクの高い薬でもある。例えば、第一選択薬のメトトレキサートは、一般的に抗がん剤として使われている薬剤。

「初めて関節リウマチの患者さんの処方せんをみる薬剤師さんは驚くと思いますが、今では登録医や専門医が診ている60%以上の患者さんに処方されています*1。薬剤師さんは処方せんだけで判断しなくてはいけないこともあって、最近の病気や治療の考え方を知らずに調剤をするのは、かなりハードルが高いと考えました」。

実際に薬剤師からも、関節リウマチや他のリウマチ性疾患のことをもっと知りたい、どうしてこういう治療がされるようになったのか知りたいという要望があったことが「登録薬剤師」を作るきっかけになったという。

医療事故を未然に防ぐため、登録薬剤師は最後の砦になる

メトトレキサートは低用量で週1~2日のみ服用という用法で承認された薬で、その用法を誤って連日投与し、患者が亡くなる事故も実際に起きている。

「患者さんに上手く情報が伝わらなかったという問題があります。用法用量で大きなミスがあると患者さんに大きな不利益になってしまうことがある。医師が間違え、処方せんがそのまま発行された場合、これはおかしいと直感で疑義照会をしてくれる薬剤師さんが最後の砦。私たち医師には大きな存在だと思っています。医師は患者さんがどこの薬局に行くかわからず、その薬局の質を知ることができません。登録薬剤師になっていただき、リウマチ領域の疾患について一定の知識を持っていただければ、新しい免疫抑制剤の効果、リスクを患者さんに正確に伝えるときなどに自信を持って調剤をしていただけると思います。医師としても、リウマチ性疾患のことを十分わかってくれる薬剤師が増えるととても安心です。繰り返しますが、この20年で関節リウマチなどのリウマチ性疾患の薬物療法が大きく変わりました。この変化は昔の教育を受けただけの薬剤師さんだとついていけない程の変わりようなので、最近の考え方を薬剤師の皆さんに知ってもらいたいと思います」。

将来的には認定制度も検討。ステイタスの強い制度にしていきたい

資格取得条件の中には、医療機関、保険薬局で直近5年間において、リウマチ性疾患の薬学的管理指導に通算1年以上従事していることと記されている。

図2:日本リウマチ財団リウマチ登録薬剤師
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図2:日本リウマチ財団リウマチ登録薬剤師

「実際の患者さんに薬局で会ったこともない、来局する予定の患者さんがいない薬剤師さんに登録をしてもらっても意味がないので、何等かのリウマチ性疾患の患者さんの治療薬を調剤したことがある薬剤師さんということです。財団が指定している研修会で勉強し、リウマチ性疾患についての知識をアクティブに得ていただき、いい形で調剤に循環させていただきたいと思っています。財団では毎年6月に『日本リウマチ月間』を開催しており、参加していただければ単位を十分に取れるようになっています。また、能動的に知識を得に行っていただけるということであれば、財団主催の研修会だけではなく日本リウマチ学会や日本薬学会、日本医療薬学会、日本薬剤師会学術大会、日本臨床薬理学会などへの参加も研修単位として認められます。また、内容や演者を確認して財団が認定したさまざまな研究会参加でも研修単位は取れるようにしています」。

図3:リウマチ月間リウマチ講演会
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図3:リウマチ月間リウマチ講演会

リウマチ性疾患の調剤に特化した認定制度は今のところない。

「認定制度にすることも検討したのですが、ハードルが一段高くなってしまいます。今は、むしろ広く、情報を伝えること。まずは登録制度の認知度が向上するように進めていき、その後に認定制度を検討する。そのようなステップで考えています」。

今後は登録薬剤師制度を充実させていくとともにステイタスの強い制度にしていきたいと川合氏は語る。

「健康保険の点数にこれが反映されるとか、登録薬剤師がいることでその病院、薬局にメリットがあるというような形に将来できたらと思います」。

多職種間の連携システムモデルとして内外から注目を集めている

今年から「日本リウマチ財団登録理学療法士・作業療法士」制度もスタートした。

「リウマチ性疾患は、関節リウマチや膠原病の他、骨粗鬆症や変形性関節症なども含めて広い意味で数えると100疾患以上あります。代表的なのが関節リウマチで、わが国の患者さんは報告によって異なるが、38~101万人*2。この病気は関節の炎症が続くと関節が壊れ、身体障害になり、日常生活の動作が制限されるのが一番の特徴です。そうすると薬物療法だけで治療するのではなく、リバビリテーションで身体障害の改善やQOL向上も大事ですし、ときに手術が必要なこともありますので、多科の医師による協力が必須です。そこに薬剤師と看護師、さらに理学療養士や作業療法士も入った他職種のチーム医療が大切です。そのため、財団としてはトータルケアの各種登録制度を作って皆で情報を共有しています」。

同財団の「リウマチ専門職制度」は国際的にもトータルケアの見本として、また安定した医療を患者に提供する優れた多職種間の連携システムモデルとして注目されている。

「リウマチ専門職制度は年々ステップアップし、発展しています。また、こうした情報は、多職種みんなが共有することにより、患者さんは安全に最適な治療が受けられることになります。こうしたチーム医療の中で、薬の副作用に注意し、適切に薬の効果が得られるように患者さんをサポートすることに貢献していただける登録薬剤師さんが増えてくれることを心から願っています」。

  1. 「2015年リウマチ白書 リウマチ患者の実態〈総合編〉」(編集:日本リウマチ友の会), p.30, 2015.
  2. 川合眞一:関節リウマチ. 「内科学」(総編集:門脇孝、永井良三), pp.1241-1247, 西村書店, 2012. より算出