【Web Excellent Pharmacy 第10回】Community Pharmacy - かんまき薬局グループABC薬局

芦田 八重子

かんまき薬局グループABC薬局/会長

芦田 八重子氏

芦田 泰弦

かんまき薬局グループABC薬局/社長

芦田 泰弦氏

大類 弥穂子

かんまき薬局グループABC薬局/副社長

大類 弥穂子氏

「地域に密着した、オンリーワンの薬局
 ―4つの「近い」で地域に貢献するー」

http://abc-ph.co.jp/info/shop.html
かんまき薬局グループABC薬局 ロゴ画像

「町の薬局」から地域へ展開

昭和43年(1968年)、かんまき薬局(本店)会長の芦田八重子氏は、大阪のベッドタウン、高槻市の上牧地区に小さな薬局を開いた。

「町の薬局としての『かんまき薬局』から、医薬分業が推進される時代となり、平成10年(1998年)、阪急京都線の水無瀬駅前にABC薬局水無瀬店をオープンしました。高槻周辺地域が開発されるのに合わせて、駅前や住宅地に薬局を開設し、かんまき薬局グループとしてABC薬局を9店舗展開しています」と社長の芦田泰弦氏。

高槻という地域の中で、どう薬局を地域に役立つ存在にしていくか。調剤だけではなく、開業当時のような、地域の人々に健康相談をしながらOTC医薬品などを販売してきた「町の薬局」への回帰が、そのカギになると芦田泰弦氏は考えている。

4つの「近い」

ABC薬局を知るうえで欠かせないキーワードは「4つの『近い』」だ。何が近いのかというと、「店舗間が近い」「経営陣と近い」「医療従事者と近い」「患者様と近い」の4つだ。

それぞれ「近い」ということが、物心両面でさまざまな隔たりをなくし、より効率的でクリエイティブな仕事につながっているという。そして、ABC薬局が目指す町の薬局への回帰も、この「近さ」が大きな力となっているようだ。

「店舗間が近い」が情報共有に役立つ

図1:小学生向け夏休み自由研究企画の案内
図1:小学生向け夏休み自由研究企画の案内

ABC薬局の9つの店舗は、高槻市島本地区を中心に出店している。これは、店舗間の情報共有や、薬剤の融通、補充に非常に役立っている。

「何よりも、スタッフ同士が折に触れ集まりやすくなっています。店舗間の連携に必須な会議も、時間を決めてさっと集まれます。管理薬剤師会議、在宅医療業務会議、新人研修、栄養委員会など定期的な会合も日程調整などがしやすく、店舗間・スタッフ間の顔の見える関係が出来てきています。最近では、老人会などの高齢者の集まる集いで、薬剤師や栄養士に話をしてほしいという依頼も多く頂戴していますし、薬の相談会、栄養相談会などを行ったり、夏休みの小学生のお子さんの自由研究をお手伝いする企画を催したりという時には、この店舗間の連携が役に立っています」と芦田泰弦氏。

「経営陣と近い」の利点

かんまき薬局グループの母体、かんまき薬局は、家族経営ながら全員が薬剤師だ。経営者であるとともに、薬剤師であることで、現場におけるスタッフの指導・相談などにも同じ薬剤師として当たることができる。

「一番の願いは、現場スタッフと経営陣が近い距離で、一緒になって考えながら進んでいくことです。そのため、毎年『仕事の効率化・イベントの企画』などテーマを決めて店舗ごとに取り組んでもらい、それを年1回発表し、参加者同士で投票してもらい、店舗賞、個人賞として表彰しています。昨年は『薬局プラスアルファ』というテーマでした」。

店舗運営にあたって、患者さんのためになることや仕事の効率を高めることなど、スタッフそれぞれが創意工夫した事柄に積極的にチャレンジできるのも、経営陣と近い距離で相談ができるからだ。

地域の医療従事者や多職種と「近い」

図2:地域の健康フェスティバルの案内
図2:地域の健康フェスティバルの案内

店舗が地域内で密集していると、地域の医療機関や行政・他職種との連携も自然に密になる。

芦田八重子氏は、「地域に根差した経営方針で店舗展開し始めた当初から、開業する医師たちから『一緒にやりませんか』とのオファーが絶えませんでした」と話す。

特に、在宅医療に取り組むようになってからは、医療従事者、薬局スタッフ間の勉強会のみならず、患者さんに向けたセミナーやカフェのような取り組みもどんどん増えている。現在は全9店舗で在宅医療を行っているが、多職種との顔の見える関係の構築を大切にしている。

「そういう関係の中で、2019年11月には、銀行さんのコミュニティホールを会場に、大学や病院、介護事業所のみなさんとともに第2回目の健康フェスティバルを開催しました。私たちは骨密度測定や栄養と薬の相談ブースを設けました。大学の先生には薬局の活用の仕方についての話を、また銀行さんは特殊詐欺の話をされ、お年寄りに興味を持っていただける内容になりました」と芦田泰弦氏。

地域の病院、医院、薬局、製薬メーカー協働で、医療従事者向けに「骨粗鬆症連携フォーラム」なども開いた。地域の医療従事者がチームになって情報共有し、スキルを高めて地域の人々への貢献につながればとの思いからだった。

「患者様と近い」に帰結する

地域の医療従事者や介護福祉事業所と連携する、「患者さん向けの市民講座」も月1回開催している。地域、患者と近い関係ができてくると、さらに在宅医療を手掛ける診療所や介護事業所のケアマネからオファーが増えた。まさに好循環になってきている。

「実際に在宅医療を手掛けると、それまで患者さんの見えなかったことが見えてきます。患者宅の訪問に出るのも大変なお店もあるでしょうけれど、在宅医療は薬剤師の活躍できる場であり、薬剤師の必要性を普及していく場でもあると思っています」。地域の薬剤師会でも役員として活躍する芦田泰弦氏は、患者さんと「近い」ことが、薬局や薬剤師本人の価値を高めると感じている。

また、ABC薬局では、OTC医薬品薬や健康に役立つ食品・雑貨などの取り扱いにも力を入れている。「最近は、カロリーや糖質などにこだわったレトルトの食品などが多く出ています。店舗ごとに試食会や、サルコペニアについて伝える教室などを開催したりしていますが、地域の中で役立つ取り組みをもっと進めていきたいですね」と副社長の大類弥穂子氏。

図3:毎月開催の市民講座の案内

図3:毎月開催の市民講座の案内

写真1:薬剤師と栄養士によるサルコペニア教室

写真1:薬剤師と栄養士によるサルコペニア教室

口コミで広がる認知症カフェの試み

写真2:認知症カフェ
写真2:認知症カフェ

ABC薬局が、3年間取り組みつづけていることがある。月1回開催される認知症カフェ「ABCにこにこカフェ」だ。最初は、地域包括支援センターからカフェをつくってくれませんか、というアプローチがあったのだという。

「地域の誰もが、気軽に認知症について相談できたり、知識を得たりできる場所づくりです。ご家族が認知症にかかって困っている方、またその当事者ご本人も楽しく来ていただける。そのために、地域のボランティアさんたちや行政とABC薬局のスタッフが一緒に運営しています」と大類弥穂子氏。

認知症の患者さんご本人、ご家族に向けた薬や栄養に関する資料もカフェ会場に置かれている。スタッフが手作りしたものだ。折り紙や工作、体操など、参加者と運営者が一緒に楽しむことをとても大事にしているのだという。そして、地域にあって、誰でもが入りやすい会を目指している。

「参加してくださる方の困りごとなども、その中で拾い上げ、必要に応じて地域包括支援センターにつなげるようにしています。認知症というと『私には関係ない』と思われる方もあり、周知はなかなか難しいところがありますが、口コミで新しい参加者が来られるようになりました」。

スタッフの自発的な取り組みをサポート

さまざまな企画が生まれやすいよう、スタッフをサポートすることも大切にしている。たとえば、年に2回の全体研修会では、アロマや手話など、普段の薬局での業務のプラスアルファになる内容の研修を行い、楽しみながら知識やスキルを身につけられるものを目指す。

「認定薬剤師などの資格を取得したいというスタッフの要望に応えるために、スタッフ各人に年間の研修費を予算化し、学会参加、発表がしやすいように支援しています。スタッフ個々がやりたいことを探して自発的に取り組む、そういう風土を大切にしたいと思っています。調剤ができるというだけでは、他店と差別化できません。自発的に地域活動などに取り組もうとするスタッフの姿勢をサポートすることで、地域の中で薬局が育っていくのではないかと考えています」と芦田泰弦氏。

大阪北部地震で改めて考えた「地元で愛される薬局」

2018年6月18日、大阪府北部をマグニチュード6.1の大地震が襲った。ABC薬局が展開する高槻市は、震度6弱という大きな揺れに見舞われ、各店舗も大きな被害を受けた。その中で、交通機関がストップし人が溢れる駅前の店舗では、被災して途方に暮れる地域の人たちも多く、スタッフが自主的にお年寄りや妊婦の方、体の不自由な方などに「店舗内で座って待機していただいて大丈夫ですよ」と声がけし避難していただいた。

芦田泰弦氏は、「薬局のスタッフが少ないため、近隣のクリニックのスタッフが自ら応援に来てくださるなど、日ごろ培った地域のつながりに支えられていることを強く感じました。ちょうど震災から5日後に社内の全体研修がありました。『地元で愛される薬局』をテーマにグループディスカッションを行いましたが、そこでは震災を経験したスタッフが、改めて薬剤師としての自分や、薬局と、地域の人たちとのかかわりを考える発言がたくさん見られました。地域貢献をやらなければいけない、という意識がより高くなったのではないかと思っています。今後は、先輩が後輩を教育し、教え受け継いでいくシステムを醸成できれば良いなと考えています。これから実務実習などに来られる学生にも、地域の人たちと密に触れ合いながら地域貢献も出来る環境をぜひ見ていただきたいですね」と話された。