【Web Excellent Pharmacy 第7回】Community Pharmacy - 株式会社マスカット薬局

髙橋 正志

株式会社マスカット薬局/代表取締役

髙橋 正志氏

守安 洋子

株式会社マスカット薬局/教育部門長

守安 洋子氏

「命ある企業によって地域の健康に貢献します」

https://muscat-pharmacy.jp
株式会社マスカット薬局 ロゴ画像

イノベーションを継続する地域密着型の保険薬局グループ

岡山県内で『マスカット薬局』を14店舗展開し、現在106名(うち薬剤師 56名)が従事している株式会社マスカット薬局。

代表取締役 髙橋正志氏の原点は、保険薬局の薬剤師として在宅医療に携わっていた時に、ある難病患者に医療従事者として深く寄り添うことで、医師にもまさる信頼関係を患者・家族と築くことが出来たことだと言う。病院薬剤師として10年間勤務した後、1998年に在宅で連携していた医師から紹介された津山市の病院より、開局の依頼があり同社を設立。その後、地域密着型の薬局として『マスカット薬局』を展開していった。

しかし、店舗展開に比例して、本部と店舗の信頼関係や人間関係を中心とした職場の雰囲気の悪化などから退職する社員も出てきた。「このままではいずれマスカット薬局はなくなる」と危機感を抱いた髙橋氏は、2006年から『経営人間学講座』に参加。そこで、自らが自己革新し、考え方や価値観を変えていかなければ会社の環境は変わらないということを確信したと言う。また、“医”の中の蛙にならないために、髙橋氏は他業種が集まる『岡山県中小企業家同友会』に入り、経営指針成文化など具体的な手法を学ぶ。薬局企業業界の経営ではなく、一般的企業の経営感覚を持ちながら、理念型経営へシフトした。

創業10周年となる2009年を第二の創業年とし、10周年記念の祝賀会で決意表明をした髙橋氏は、全職員の前で経営指針(理念と経営目的)を発表。企業理念に「命ある企業」を掲げ、かかりつけ薬剤師・薬局として、地域の方々一人ひとりの健康を守るという目的を持った企業活動を行うことを誓い、職員一人ひとりが目指す会社方針として5つの基本方針を発表し、組織を根底から変えるイノベーションを1期からスタートさせた。

「以来、イノベーション発表は毎年行なっています。薬局長が単年度事業計画目標を発表。全店舗の数字を『見える化』することで数値目標を達成する店舗が増え、利益も上がってきています。その利益は、弊社の人材育成と地域住民の健康イベントに使うことにしています」。

また、2017年12月には、CSR活動をCSRレポートとして明文化し、今後も毎年マスカット薬局の役目としてCSR活動を継続し、SDGsにも取り組んでいる。

医薬品情報管理室を設置人材育成を強化

髙橋氏は経営人間学講座で学んだ「会社は学習組織体」という考えを基に人材育成にも力を入れ始めた。

「医薬品の適正使用に最も重要なのは、医薬品情報ですが、保険薬局ではその教育と研究は立ち遅れていると感じていましたので、これを推進する必要があると考えました」と髙橋氏。

その環境を実現するため、教育(共育)部門の柱の一つとして2010年、医薬品情報管理室(DI室)を設置。室長として、現国立病院機構岡山医療センター、県薬剤師会薬事情報センターなどに勤務経験のある守安洋子氏を同社に招いた。

「DI室は、医薬品が安全かつ適正に患者さんに使用できるよう、厚生労働省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、製薬会社、卸業者、病院、薬剤師会、行政、地域などの関連する最新の情報を薬局薬剤師の視点で捉え、同薬局で働く職員のみならず、患者さんをはじめ、薬学生、地域・学校などにニーズに応じた情報を提供しています。社員にはできるだけ最新の情報を提供したいと考えていますが、結果を提供するだけでなく情報の検索の仕方まで指導し、プロセスの大切さを伝えるよう心がけています。また、医療での人脈の大切さなども伝えていきたい」と話す守安氏。

図:マスカット薬局 学習組織体の木 図:マスカット薬局 学習組織体の木

医療機関で週1回の研修を行う家庭医療専門薬剤師レジデント制度

同社では、医薬品情報管理室を中心に総合的な育成計画を構築し、進化し続ける生涯学習システムを行っている。

「保険薬局の薬剤師が、医師のもとで臨床を学ぶにはどうしたらよいか」を考え、病院薬剤師の「薬剤師レジデント制度」参考に、家庭医に薬剤師に臨床教育を指導していただけないかと依頼し了解を得た。その後、「研修の目的、指導内容など」の打ち合わせを重ねレジデンシープログラムが整い、2014年から家庭医療専門薬剤師レジデント制度をスタートし、現在5名が研修を受けている。

薬剤師の立場から『家庭医療』を実践し、地域の健康を守る薬剤師を育てることを目的とし、4年間の教育制度として、家庭医の協力の下で運営し、マスカット薬局の薬剤師として勤務しながら提携する医療機関で週1日の研修を2年間行う。ゴールは、臨床推論に基づき、薬局でのトリアージが行えること、適切な薬物療法を提供できることであり、OTC医薬品の販売時などでのトリアージと、適切な調剤と服薬指導によりアドヒアランスを向上させ、副作用の早期発見と発現率の低下を目指している。

学会参加、資格取得などの支援サポート

専門領域の探求、各学会への参加や発表、論文投稿、認定資格の取得までを視野に入れた様々な教育体制を整え、資格支援サポートも手厚く行っている。

「薬剤師には、基本的業務に加えて常に変化していく薬剤師業務にも対応できる能力を身につけてもらっています。1年に1回面談を行い、振り返りをしながら、本人のキャリアプランを確認しています。薬剤師の多くは、緩和薬物療法認定薬剤師やプライマリ・ケア認定薬剤師などの認定資格を、事務員は登録販売者やアロマテラピーの資格取得を目指しています。また資格のランクに合わせた評価制度も行なっています」。

地域の健康を守るためコミュニティーの場を創出

地域の健康を守ることを意識し、健康サポート事業にも力を入れて取り組んでいる同社。薬局は地域の人たちが集まるコミュニティーの場を創造することが大切と考えている。

2019年に発表した「マスカット薬局3年後のビジョン」に、健康サポート機能の強化・地域包括ケアシステムにおける役割を担う・組織化した人材育成・地域社会の一員として環境保全活動の推進が明記された。毎年6月には、全国の『薬局へ行こう!ウィーク』に合わせ、全店で健康づくりのためのイベントを開催。地域への取り組みとして健康相談が出来る「マスカットカフェ」や「アロマテラピー」の勉強会、健康運動指導士兼シナプソロジーインストラクターによる「運動教室」を実施している。

写真1:地域の講演活動 写真1:地域の講演活動
写真3:運動教室 写真3:運動教室
写真2:健康相談 写真2:健康相談

また、公民館や地域サロンで行う測定会で「もの忘れ相談プログラムMSP-1100」という機器を用いて、認知症あるいは軽度認知機能障害(MCI)の早期発見と受診勧奨につとめている。「薬局を利用していない地域住民に対しても、地域サロン、健康教室等の場で、出張測定会、講演等も行っています。今までは65歳以上の高齢者をターゲットとした健康イベントを企画していましたが、今後は30代の主婦など、若い層に対してもアプローチしていきたいと思っています」と髙橋氏。

マスカット薬局の今後は

最後に今後の展望を伺うと、「『地域の一人ひとりの生命・健康を守る』を経営目的として、さまざまな企画を立ち上げ取り組んできました。弊社は命ある企業を理念としているので、「がん哲学カフェ」の実施などを計画していると言う。

「本店の前にある医療センターには、がんの患者さんが多いので、退院後の心のフォローを誰がするのかと思ったことがきっかけです。患者同士語り合う中で、少しでも不安が解消し笑顔になってもらえるような場所を作りたい。そのような心に寄り添うよう仕事を今後は薬局が出来ればいいと思っています」。