滋賀県における血液疾患診療の質のさらなる向上を目指して

  • 診療科血液 免疫内科
  • エリア滋賀県大津市長等

辻 將公(つじ まさあき)先生

日本赤十字社 大津赤十字病院/血液 免疫内科 部長

辻 將公(つじ まさあき)先生

滋賀県の中核病院として、地域医療に貢献

37の診療科、796床の病床を有する当院は、大津市(人口約34万人)、高島市(同約5万人)を中心に草津市、栗東市等の地域医療機関との連携の下、滋賀県の中核病院の一つとして地域医療に貢献しています。最近は、湖東地区や甲賀地区、あるいは県外から来られる患者さんが増加傾向にあります。高度救命救急センターに指定されており、私たち血液 免疫内科も最前線で血液疾患の診療に従事しています。

2017年度の当科入院患者数は369例、うち254例が新患でした。疾患別では非ホジキンリンパ腫が最も多く、次いで骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病が多くみられます。病床数は定床50床、うち無菌室が7床で、専門医6名、後期研修医1名という体制で診療にあたっています(2018年9月現在;)。

血液 免疫内科の診療体制(大津赤十字病院)

提供:辻將公先生

たとえ困難が予想されても、患者さんの希望に寄り添い治療法を検討

当院は骨髄バンク移植・臍帯血バンク移植の認定施設であり、末梢血を含む全てのソースの移植に対応しています。滋賀県内では当院と滋賀医科大学附属病院の2施設が非血縁者間骨髄移植を実施しており、近年、当院の年間移植件数は増加傾向にあります。2017年度は自家移植を4件、同種移植を11件施行しました。しかし、県下約141万の人口に対応するにはまだ十分とは言えません。受け入れ体制をさらに強化し、移植件数を伸ばしていくことが課題と考えています。

また、私たちはエビデンスに基づく標準的治療の実践を土台としつつ、困難が予想される症例にも真摯に向き合うよう努めています。例えば、仮に成功率が高くないと予想される場合であっても、患者さんが移植を強く希望されるのであれば本人やご家族の話をよく聞き、その適応について検討します。患者さん、ご家族に対しては、造血細胞移植コーディネーター(HCTC)とともに治療選択肢とその成績・リスクについて詳細な情報を提供します。こうした姿勢が常に正しいとは言い切れないかもしれませんが、特殊な状況下で患者さんが治療に対して強い希望を持っておられ、成功例の報告があり、かつリスクについて患者さんが十分に理解されているのであれば、できる限り患者さんの希望に応えたいと考えています。

多職種から成るチームが、経験と知識を重ねていくことが重要

移植に際しては医師(精神科等、他科の医師も含む)、看護師、臨床検査技師、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士、栄養士等、多職種から成るチームを編成し、移植前・中期・退院前および随時のカンファレンスを実施しています。これらのカンファレンスには、HCTCの資格取得を目指すスタッフにも参加してもらいます。血液内科医以外の職種が移植について知り、施設全体として移植の経験を積むこと、最新の情報を共有すること、そして各職種が高い意識を持ち続けることが、チーム医療の質の向上に繋がります。

感染対策は施設の状況も踏まえて積極的に

血液腫瘍の治療においては、原疾患の治療のみならず支持療法が重要であることは言うまでもありません。原疾患にもよりますが、治療強度が高くなればなるほど支持療法の重要性が高まります。中でも感染対策は生命にも関わる重点事項であり、当院では感染対策チーム(ICT)が院内ラウンドにて感染管理状況の監視、指導を行うなど徹底した対策に努めています。

現在、細菌感染とウイルス感染は、モニタリングとガイドラインに準じた早期治療によってほぼ制御できています。まれに生じる耐性菌も抗菌薬で抑制できており、重篤なヒトヘルペスウイルス-6(HHV-6)感染やアデノウイルス感染はほとんど発生していません。一方、真菌感染対策としては決して新しいとはいえない施設下での真菌感染リスク上昇の懸念、また、院外に依頼しているβ-D-グルカン測定に時間を要することを考慮し、なるべく早期から積極的に経験的治療に踏み切るようにしています。今後は薬剤の適正使用に寄与する臨床的指標やバイオマーカーが確立されていくことに期待しています。

チーム医療の推進・強化が継続的な課題

最近、移植前から移植後のフォローアップに至るまでHCTCが積極的に関与することにより、移植医療が以前よりも円滑に進められるようになったと実感しています。当院では感染対策をはじめ栄養サポート、緩和ケア、口腔ケア、リハビリテーション等において多職種によるチーム医療を実践していますが、今後もその推進・強化が継続的な課題と考えています。また、近年はHLA半合致移植(ハプロ移植)のニーズが高まっていると感じており、当院でも導入を検討しています。こうした取り組みを通じて、滋賀県における血液疾患診療の質をさらに向上させていくことが、私たちの目標です。

医療機関名称 日本赤十字社 大津赤十字病院
住所 〒520-8511 滋賀県大津市長等1-1-35
電話番号 077-522-4131(代表)
医師名 辻 將公(つじ まさあき)先生
経歴
1992年
京都大学医学部卒
2006年より
大津赤十字病院勤務
ホームページ https://www.otsu.jrc.or.jp/外部サイトを開く