患者さん中心の全人的医療の実践を目指して

  • 診療科消化器・血液・膠原病内科
  • エリア青森県弘前市本町

山形 和史(やまがた かずふみ)先生

弘前大学医学部附属病院/消化器・血液・膠原病内科 診療准教授

山形 和史(やまがた かずふみ)先生

診療各科の壁を越えた集約的治療体制を整備

岩木山のすそ野に広がる津軽平野に位置する当院は、1945年(昭和20年)に青森市に開設された青森医学専門学校附属病院を前身としています。同年の戦災により弘前市に移転する際に弘前市立弘前病院が附属病院として移管され、以来70余年にわたり北東北医療圏の中核病院としての役割を担ってきました。現在は、消化器血液内科学講座教授の福田眞作病院長の管理・運営の下、33の臓器系統別診療科と25の中央診療施設等が設置され、充実した診療体制となっています。また、当院は「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受けており、診療各科の壁を越えた集約的治療体制を整えています。

当院血液内科では、白血病・骨髄異形成症候群・多発性骨髄腫などの造血器悪性腫瘍のほか、種々の貧血、出血性疾患、血栓性疾患などの診療を行っています。急性白血病や高リスク骨髄異形成症候群の治療においては、主に移植非適応の患者さんに対する強力化学療法を施行しています。同種造血幹細胞移植の適応がある治療抵抗性・高リスク白血病等に関しては青森県立中央病院血液内科(久保恒明部長)に依頼し、スタッフ間で連携を取りながら移植前までの治療を当科で行っています。青森県立中央病院血液内科とは合同の症例カンファレンスを定期的に実施するなど(写真)、緊密な連携体制を敷いています。また、多発性骨髄腫の治療においては、新規薬剤を積極的に使用しつつ、自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法も採り入れています。

弘前大学医学部附属病院スタッフと青森県立中央病院血液内科スタッフによる合同カンファレンス

提供:山形和史先生

多職種連携の下、安心できる治療の提供と良好なQOLの維持に努める

造血器悪性腫瘍の治療は長期にわたります。患者さんの心身の疲弊は極めて大きいため、良好なQOLを維持しながら、安寧に治療を受けていただけるよう努めています。そのために、私たち医師のほか看護師、病棟駐在薬剤師、理学療法士、歯科医師、臨床検査技師、栄養士、臨床心理士ら多職種間で診療情報を共有し、連携を日々深めるよう心がけています。各専門職種が目的意識を持って治療に介入することが、治療成績の向上に繋がると考えています。

ベッドサイドで患者さんに接する機会が最も多いのは看護師ですが、当科には経験豊富な看護師が多く、患者さんの悩みごとの相談も含めて様々な面で尽力してくれています。医師だけでは乗り越えることが難しい物事にも共に対処してくれる、心強い存在です。看護師の間では定期的な勉強会も開催しており、私も講師的な立場で参加しています。その際は教科書的な内容ではなく、病棟にいる患者さんの病態や治療を例に取って説明することで、造血器悪性腫瘍に対する理解が深まるようにしています。

感染症対策においては患者さんの細かな状況把握が重要

近年、遺伝子レベルの知見の集積により、造血器悪性腫瘍の診断や治療、病勢コントロールの評価方法などが進歩しています。慢性骨髄性白血病のように分子標的治療の登場によって予後が飛躍的に向上した疾患もあります。

造血器悪性腫瘍に対する治療は、患者さんの年齢や全身状態を鑑み、また、患者さんを支える家族がおられるかなどの背景に基づき、その適応を判断します。標準的なプロトコルが適応となる場合はそれに準じた治療を行いますが、治療期間中に感染症などによって致命的な状況に陥ることのないよう、適切な支持療法を実施することが重要となります。

当科では一般病棟に2~4床の準無菌室を設置しています。また、自家末梢血移植併用大量化学療法施行時には強化化学療法室に入室して治療を行います。病棟全体がクラス10,000の無菌度を保つ構造であり、その中にクラス100の完全無菌室を4床備えています。感染症対策においては患者さんの状態を細かく把握し、早期に適切に対応することが求められますので、注意深くモニタリングしています。

発熱性好中球減少症(FN)に対しては、ためらうことなくに抗菌薬の投与を開始するのが原則です。しかし、漫然と投与し続けることは問題であり、投与と並行して菌種の同定に努めています。また、日頃から耐性菌の出現に留意し、薬剤感受性を一覧にしたアンチバイオグラムや当院感染制御センターの感染症専門医のアドバイスを参考にしながら耐性菌誘導を阻止すべく鋭意努力しています。

地域へのさらなる貢献に向けて

当科は1946年(昭和21年)に開設された旧内科学第1講座の流れを汲んでおり、患者さんを中心に据えた医療が根本精神として受け継がれています。患者さんの全身状態の把握を重視して診療に当たる全人的医療の方針は、医師教育にも貫かれています。

青森県における造血器悪性腫瘍の診療体制は、この10~15年で大学病院や県立病院との連携も含めて徐々に充実してきました。しかし、患者さんが選択できるほど多数の施設があるわけではなく、造血器悪性腫瘍を診療できる専門医は県内で10名程度に限られています。そうした環境の中、私たちは患者さんが十分に納得して治療を受けていただけるよう丁寧なインフォームド・コンセントを重視し、新しい治療法も積極的に採り入れながら、よりよい医療の提供に努めていきたいと考えています。