基礎研究で得た知見を臨床現場に生かす――“探索的な臨床研究”の推進を目指して

  • 診療科血液・腫瘍内科学
  • エリア大阪府吹田市山田丘

前田 哲生(まえだ てつお)先生

大阪大学大学院医学系研究科/血液・腫瘍内科学 助教

前田 哲生(まえだ てつお)先生

関連施設との連携の下、患者さんの病態やニーズを考慮したきめ細かな対応が可能

大阪大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科は、地域における血液内科診療の拠点としての役割を担っています。地域内に多くの関連施設が所在しており、施設間連携の下、個々の患者さんの病態やニーズを考慮したきめ細かな対応が可能な点が特徴の1つです。専用の病床を49床備えており、そのうち無菌個室が12床、4人部屋の準無菌室が2部屋です。1日平均入院患者数は約40人、年間の新規入院患者数は約200人です。

非血縁者間移植が増加傾向、リハビリテーションは移植日から開始

当科は血液疾患全般に対応しています。疾患内訳としては約8割が白血病、悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群などの造血器腫瘍で、残りの約2割が貧血、止血異常などの良性疾患です。

移植は年間25~30件実施しており、近年は非血縁者間移植が増加傾向にあります()。これには、周囲に非血縁者間移植が可能な施設が少ないことが影響しています。臍帯血移植にも取り組んでいますが、最近では他の関連施設で行われることが多くなり、当科で実施する機会は相対的に減少傾向にあります。高齢患者への骨髄非破壊的移植(ミニ移植)も導入しており、現時点では64歳までを対象としています。たとえ同じ年齢であっても病態や身体機能は患者さんごとに異なるため、移植の適応を年齢のみで判断することは困難で、65歳以上の患者さんにも実施できるようにしていきたいと考えています。ただ、移植は目的ではなく治療の1つの手段にすぎずトータルセラピーとして考えています。

チーム医療の一環として、リハビリテーションおよび口腔ケアを積極的に導入しています。無菌室内にリハビリテーション室を設け、移植日からリハビリを開始するようにしています。心肺機能を高めることは、移植後の予後の改善に繋がるとされます。口腔ケアは、歯科医と専門の看護師チームが共同で行っています。

また、入院中のフォローアップを担う看護師が退院後の外来看護も担当し、フィードバック作用が働くよう工夫しています。さらに、病棟には専任の薬剤師が配属され、薬物療法の管理や患者指導を行っています。

移植件数の年次推移(大阪大学医学部附属病院血液・腫瘍内科)

提供:前田哲生先生

原因菌を迅速に同定し、早期に適切な治療を行うことが可能に

感染症対策の一環として、施設内での血液培養を積極的に行っています。現在、速ければ6時間前後で原因菌を同定できるシステムが構築されています。移植の場合はグラム陰性菌が多いですが、カテーテル関連となるグラム陽性菌などもあります。微生物学的検査、病理組織学的検査、画像検査等の機器の発展により、原因菌を迅速に同定することができるようになりました。これにより、以前のように多種類の抗菌薬を使用することなく、早期に適切な治療を開始することができるようになったことは、大きな進歩です。

より優れた移植法の確立に向け、腸内細菌叢や新たな生着マーカーを検討

当科では医師主導型の研究を含め数多くの臨床研究を進めており、抗体医薬や免疫療法薬などの新規治療薬や、造血幹細胞移植後の維持療法の治験にも積極的に参画しています。引き続き、より優れた移植法の確立を目指した検討を進めていきたいと考えています。

近年、腸内細菌叢の役割が種々の領域で注目されています。当科では造血幹細胞移植後の合併症と腸内細菌叢の関連に関するメタゲノム解析を用いた研究を進めており、今後は腸内細菌叢を造血器腫瘍患者の病態の評価や予後の改善に活用する試みについても検討していきたいと考えています。

また、ヒト臍帯血の生着のマーカーとしての内皮細胞選択的接着分子(endothelial cell-selective adhesion molecule;ESAM)の有用性についても検討を行っています。

最近では基礎研究で得た知見を臨床現場に生かす“探索的な臨床研究”が重要と考えられていますが、血液・腫瘍内科はこれを先導する領域と言えます。様々な困難を乗り越えながら探索的な臨床研究を推し進めていくことが、当科の役割の1つと考えています。

大阪大学医学部附属病院内科には当科を含め8つの診療科のローテートシステムがあり、幅広い臨床研修を受けることができます。また、関連施設で充実した卒後研修を受けることも可能です。幅広い素養を備えた若い医師が、やがて血液・腫瘍内科に参集されることを祈念しています。

(写真)<br>大阪大学医学部附属病院血液・腫瘍内科スタッフ

(写真)
大阪大学医学部附属病院血液・腫瘍内科スタッフ

医療機関名称 大阪大学医学部附属病院
住所 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-15
電話番号 06-6879-5111(代表)
医師名 前田 哲生(まえだ てつお)先生
経歴
1991年
大阪大学医学部卒
2001年より
大阪大学勤務
ホームページ http://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/外部サイトを開く