各診療科が有機的に連携した診療体制の下、血液疾患全般のプライマリケアを提供

  • 診療科内科
  • エリア福井県福井市和田

澤﨑 愛子(さわざき あいこ)先生

社会福祉法人恩賜財団済生会支部 福井県済生会病院/内科 副部長

澤﨑 愛子(さわざき あいこ)先生

集学的なチーム医療を実践

当院は、福井県内に4施設ある血液内科設置施設の1つです。4施設の所在地はいずれも嶺北(越前地方)であるため、各施設が近隣地域だけでなく嶺南(若狭地方)の患者さんにも対応しています。その中で当院血液内科は、血液疾患全般の診断から治療までを一貫して担っています。大学病院のような高次医療機関と異なり、いわば“血液のプライマリケア科”としての役割を主に果たしています。血液内科は2017年4月に1名(青木剛先生)増え、私と合わせて2名在籍しています(2018年1月現在)。

当院では、内科系の専門医は全員「内科」に所属しています。そのため、各診療科を受診した患者さんに対して、内科全体が連携して集学的なチーム医療を提供する土壌が形成されています。各々の医師は、専門外の領域の医師と議論を交わし、刺激を受けることにより自身の領域の専門性を高めるきっかけを得ているようです。

高齢患者に対してはQOLの改善を目指したアプローチを考慮

当科における2016年12月から2017年11月の期間の初発新規入院患者は61名で、84%が血液悪性疾患でした(図1)。また、初発新規入院患者の年齢分布を見ると、80歳以上が2015年33%、2016年39%、2017年36%という状況です(図2)。高齢化に伴い、近年は特に多発性骨髄腫が増加しており、骨髄異形成症候群も増加傾向にあります。

こうした状況を踏まえて、高齢患者に対しては年齢だけでなくフレイル(frailty)なども考慮してQOLの改善を目指した治療とケアを提供しており、栄養士、リハビリテーション医、作業療法士、緩和ケアチームらとともに、症状の緩和に主眼を置いた化学療法を積極的に導入しています。Fitであれば79歳までは若年患者と同じ用量の化学療法を施行し、80歳以上の患者さんでは減量を考慮した化学療法(palliative chemotherapy)を実施します。今後、高齢患者の化学療法に関して、全身状態(performance status;PS)、合併症、認知機能、筋力、ADL、IADL(手段的ADL)を含む総合的な治療評価の検討を行う予定です。また、65歳以上の患者さんに対してはリハビリテーションを早期から導入するようにしています。

移植に関しては、化学療法開始時、主に多発性骨髄腫と悪性リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植を実施しています。年齢制限は特に設けていませんが、高齢患者では施行困難と判断するケースが多いです。移植適応の判定に際しては一般的に合併症やADLが考慮されますが、高齢患者における認知症やフレイルの評価を含む指標はなく、これらの因子も考慮した基準の確立が望まれます。

初発新規入院患者の疾患別割合、年齢分布(福井県済生会病院血液内科)

提供:澤﨑愛子先生

支持療法、感染管理は標準的なアプローチに徹する

支持療法に関しては、ガイドラインに準拠した標準的なアプローチを行っています。近年、好中球減少に対する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤や悪心・嘔吐に対する制吐剤が進歩を遂げてきました。当院にはがん薬物療法認定薬剤師が在籍し、また、病棟には2名の薬剤師が常駐しており、個々の患者さんに合わせた適切な支持療法の実践に努めています。

感染管理に関しても、ガイドラインに基づき標準的なアプローチを行っています。感染が認められた場合は広い抗菌スペクトラムを有する抗菌薬を最大用量で投与しています。最近、Clostridium difficile腸炎やBacillus cereusによる敗血症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などに遭遇しましたが、耐性緑膿菌の発現は認めていません。基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌も少ない印象です。また、真菌感染も近年は経験していません。

患者さんの予後を充実させるため、物語と対話に基づく医療(NBM)の方法論にも注目

既に述べたように、当院内科では血液内科を含む各診療科が「内科」として有機的に連携した診療体制の下で、血液疾患全般のプライマリケアを展開しています。この方向性をさらに推し進めていくことが、今後の目標です。

患者さんには、たとえ見通しが良好でない場合であっても残された時間を有意義に過ごしていただくために、予後に関する中立的な情報を提供するよう努めていますが、今後は、その方法論を確立することが課題と捉えています。近年、「科学的根拠に基づく医療(evidence based medicine;EBM)」だけでは治療が成功しても必ずしも十分な患者満足度が得られない場合があり、これを補うアプローチとして「物語と対話に基づく医療(narrative based medicine;NBM)」が注目されています。患者さんの社会的予後の改善に向けて、NBMの活用についても検討したいと考えています。

figure64_2

カンファレンス風景①

figure64_3

カンファレンス風景②

医療機関名称 社会福祉法人恩賜財団済生会支部 福井県済生会病院
住所 〒918-8503 福井県福井市和田中町舟橋7-1
電話番号 0776-23-1111(代表)
医師名 澤﨑 愛子(さわざき あいこ)先生
経歴
1993年
金沢大学医学部卒
2014年より
福井県済生会病院勤務
ホームページ https://www.fukui-saiseikai.com/外部サイトを開く