CYP遺伝子多型解析や細菌・真菌PCR法を導入し、血液腫瘍患者さんの治療成績向上に努める

  • 診療科血液内科
  • エリア三重県津市江戸橋

藤枝 敦史(ふじえだ あつし)先生

三重大学医学部附属病院/血液内科

藤枝 敦史(ふじえだ あつし)先生

県内唯一の大学病院として

当院は三重県全域(人口約180万人)を診療圏とする、県内唯一の大学病院です。三重県は古くから血液内科診療に力を入れて取り組んできた歴史があります。単位人口あたりの血液内科医数は全国でも上位に位置付けられ、施設間連携により、多様な血液疾患に幅広く対応可能な体制が敷かれています。その中で当院は大学病院として、比較的年齢が若く、同種造血幹細胞移植をはじめとする強度の高い治療に耐えられる患者さんや、臨床試験への参加に同意していただいた患者さんを中心に診療しています。

2012年より稼働を始めた新病棟において、血液内科は18床のクリーンフロアを有し、うち2床がクラス100の病床となっています。同種造血幹細胞移植は年間15~20件ほど実施しており、内訳は血縁者間移植が約20%、骨髄バンク移植が約50%、臍帯血バンク移植が約30%という状況です。

多科・多職種が移植チームに参加

当科には造血細胞移植認定医が私を含め3名在籍しています(2017年11月現在)。移植を実施する患者さん全例で移植認定医が主治医を務めるとともに、専任のプライマリーナースが看護を担います。移植医療には主治医、病棟看護師のほか栄養管理部、輸血部、リハビリテーション科、歯科口腔外科などのスタッフも参加します。

移植においては、患者さんの体力を温存することが重要です。そのため、特に高齢の患者さんでは移植前からリハビリテーションを開始しています。また、治療期間中は味覚障害や口内炎が生じるため、個々の患者さんの状況や要望に応じて食事を選択できるようにしています。歯科口腔外科医が口腔ケアの指導を行うことで、重度の口内炎の発症が以前よりも減少していると感じています。歯科口腔外科医は、退院後も外来診療の併診にて口腔内の移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)病変への対応を含む口腔ケアを継続しています。

CYP遺伝子多型の解析により、薬物相互作用に起因する臓器障害の回避に努める

私たちは近年、造血幹細胞移植の安全性の向上に特に注力しています。免疫抑制剤と併用薬の薬物相互作用に対する注意がその一例であり、患者さんのチトクロームP450(CYP)遺伝子多型を薬剤部が解析し、移植カンファレンスで情報共有するようにしています。CYP遺伝子多型を知ることにより、免疫抑制剤と胃酸分泌抑制薬や抗真菌薬の相互作用の程度を予測し、薬物使用の安全性を高めることができます。造血幹細胞移植の安全性を高めるためのもう一本の重要な柱として、後述のように感染管理を徹底し、感染症をトリガーとして致命的な免疫応答が惹起される事態を未然に防ぐよう努めています。

PCR法による病原体同定を経験的治療に生かす

免疫不全患者さんで感染症の原因病原体が血液培養により同定される割合は少なく、特に発熱性好中球減少症(FN)を呈する症例においては血液培養の陽性率は10%に満たない状況です。そのため、発熱を認めるケースでは経験的治療が重要であり、グラム陰性桿菌を想定して第三世代以降のセフェム系抗菌薬やカルバペネム系抗菌薬を使用することが多くなっています。一方、これらの治療を強力に行うと感染の主体がグラム陽性球菌に移行していきますので、グリコペプチド系抗菌薬も比較的早期から使用しています。

当科では細菌・真菌PCR法により病原体の同定を行い、経験的治療の参考にしています。PCR法により細菌は種レベルの同定が可能です。また、真菌は広範に検出可能なプライマーにより幅広く検出後に菌種を同定するとともに、必要に応じて接合菌やFusarium属に特異的なプライマーによる検出も行います()。

新病棟の稼働以降、古い病棟で診療していた時代に苦慮していたアスペルギルス症の発生が激減し、急性期の真菌症対策は対カンジダが中心となっています。しかし患者さんが外泊される時期になると、気道症状とともに胸部CTで肺に陰影を認め真菌感染とGVHDの鑑別が必要となるケースに遭遇します。こうしたケースではβ-Dグルカン検査やアスペルギルス抗原検査が陽性であれば真菌感染症の“Probable”と判定できるものの、高い確度で真菌感染症とGVHDを鑑別できない場合は抗真菌薬の予防投与を行いながらステロイドを使用することになります。このとき、アゾール系抗真菌薬では接合菌をカバーできませんので、前述のPCR法による病原体同定が有用です。接合菌が認められた場合はアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)が選択肢となります。

真菌検出PCR系

提供:藤枝敦史先生

白血病の治療成績向上は頭打ちになりつつあり、新規治療法の開発が必須

近年、悪性リンパ腫や多発性骨髄腫に対しては新規分子標的薬を使用可能になり、治療成績の向上が得られています。一方、急性白血病は従来の治療の強度を上げつつ同種造血幹細胞移植を組み合わせて治療成績の向上を目指しているのが現状です。厳格な感染管理や臓器障害の抑制に努め、安全性を向上させることにより移植関連死亡の減少による生存率の向上が果たされてきましたが、再発の抑制は今なお十分ではありません。移植前治療で深い寛解に導入することが再発抑制の鍵であり、そのためには新規治療法の開発が必須です。私たちは、遺伝子・免疫細胞治療学/複合的がん免疫療法センターと連携してCD19陽性B細胞性急性リンパ性白血病を対象としたCAR-T療法の治験を開始しています。今後は、細胞治療を含む免疫治療や分子標的治療薬の開発によって現状を打破し、治療成績をさらに向上させていくことが重要と考えています。

医療機関名称 三重大学医学部附属病院
住所 〒514-8507 三重県津市江戸橋2-174
電話番号 059-232-1111(代表)
医師名 藤枝 敦史(ふじえだ あつし)先生
経歴
1997年
三重大学医学部卒
2006年より
三重大学医学部附属病院勤務
ホームページ https://www.hosp.mie-u.ac.jp/外部サイトを開く