全ての小児がん患者に、世界標準かつ優しく温かい医療を提供するために

  • 診療科血液腫瘍科
  • エリア東京都世田谷区大蔵

富澤 大輔(とみざわ だいすけ)先生

国立成育医療研究センター 小児がんセンター/血液腫瘍科 医長

富澤 大輔(とみざわ だいすけ)先生

専門機能を結集した小児がん診療を実践、多職種チームで患者・家族を支援

国立成育医療研究センターは小児・周産期・母性医療を専門とする国立高度専門医療研究センターとして、基礎と臨床の両面で幅広い研究活動を行っています。2013年2月に「小児がん拠点病院」の1つに指定され、2014年2月には国立がん研究センターとともに全国に15施設ある小児がん拠点病院を牽引する「小児がん中央機関」に指定されました。

2013年9月に開設した小児がんセンターでは、小児血液腫瘍、固形腫瘍、脳神経腫瘍、良性血液疾患の診療を総合的に行っています。センター内の組織は診療、研究、中央診断・データ管理、患者支援の4部門に分かれており、そのうち診療部門は内科系、外科系、診断系から成ります()。各診療科を横断的に統合した体制作りを目指しており、小児医療の専門機能を結集した小児がん診療を進めています。私たち血液腫瘍科を含む4つの診療科が主に悪性腫瘍を対象とし、非悪性血液疾患は主に血液内科が診療しています。

がん緩和ケア科は、担当医や看護師、薬剤師のほか、保育士やチャイルドライフスペシャリストなどを含む多職種による「こどもサポートチーム」とともに、小児がん患者の身体的、精神的な苦痛を和らげるための緩和医療・ケア、およびご家族への支援を提供していきます。

さらに、小児がん経験者の様々な問題を理解し、主に治療後の晩期合併症に適切に対応するために、長期フォローアップ科を設けています。2015年7月には「長期フォローアップ外来」を開設しました。当外来において私たち小児科医はコーディネーターとしての役割を担っており、成人へと成長する患者さんの晩期合併症に適切に対応できるよう、フォローアップ・プログラムを用いたアプローチを行っています。プログラムの成果を評価するために、ライフタイム・コホートという長期フォローアップ研究も開始しました。

2018年4月以降、新たに小児がん免疫診断科、小児がんデータ管理科2科が新設されます。小児がんは症例数が少なく診断に難渋する場合があるため、私たちは全国の施設からの相談に応じる「中央診断」を行っています。小児がん免疫診断科では、その中央診断機能のさらなる充実を図っていきます。

図 小児がんセンターの組織図(2018年4月以降)

提供:富澤大輔先生

多施設共同試験に積極的に参画

小児がんセンターには年間100~120人の新規の患者さんが訪れ、常に50~60人の患者さんが入院されています。施設の特性から、新規診断例に占める白血病やリンパ腫の割合は約3分の1と比較的低く、脳腫瘍が3分の1、他の固形腫瘍が残りの3分の1を占めます。

造血幹細胞移植は非血縁者間骨髄移植のほか、必要に応じて臍帯血移植や家族間HLA半合致移植(ハプロ移植)も実施しています。移植の対象疾患は、薬物療法の進歩により白血病が減少したのに対して免疫不全症が増加傾向にあり、中でも慢性肉芽腫症に対する移植の増加が顕著です。今後は慢性活動性EBウイルス感染症に対する造血幹細胞移植も積極的に実施していく予定です。

臨床試験は、日本小児がん研究グループ(JCCG)などの多施設共同試験に積極的に参画しています。当センター独自の試験として、前述の慢性肉芽腫症への造血幹細胞移植や、乳児白血病へのDNAメチル基転移酵素(DNMT)阻害薬治療の安全性の検討を進めています。また、様々な企業治験や医師主導治験にも積極的に取り組んでいます。

希少がんに対する新規治療法の開発には社会の理解と支援が必要

造血器腫瘍の新規治療法として、従来の化学療法に比べて臓器障害や晩期合併症のリスクが低い分子標的薬や免疫療法の開発に期待が寄せられています。その一方、これらの治療法はいわば医原性に免疫不全状態を引き起こすため、合併症としての感染症の予防と管理の重要性がいっそう高まると考えられます。

当科における感染管理は、感染制御チームとの協働で行っています。建物の竣工から月日が経過しているため、真菌感染症対策が特に重要な課題となっています。ウイルス感染症対策としては多種類のウイルスをPCRで網羅的にモニタリングできるシステムを有していますので、移植後の患者さんには週1回、検査を受けていただいています。

また、小児がんの治療は比較的強力で長期に及ぶことが多いため、支持療法の役割が今後ますます大きくなっていくと考えられます。支持療法による合併症の予防やQOLの維持・向上が、予後の改善に繋がります。当センターでは個々の患者さんに最適なアプローチを模索しながら、積極的に支持療法に取り組んでいます。

「全ての小児がん患者に対して世界標準かつ優しく温かい医療を提供する」――これは小児がんセンターが掲げている目標の1つです。近年、小児がん治療は長足の進歩を遂げてきました。しかし、今なお治癒が得られない患者さんが一定数存在するのも現実です。小児がんの多くは希少がんであるため、社会の理解と支援がなければ新規治療法の開発は進みません。こうした問題を社会に訴えることも、小児がん専門医としての私たちの責務と考えています。

医療機関名称 国立成育医療研究センター
住所 〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1
電話番号 03-3416-0181(代表)
医師名 富澤 大輔(とみざわ だいすけ)先生
経歴
1999年
東京医科歯科大学医学部卒
2014年より
国立成育医療研究センター勤務
ホームページ https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/cancer/外部サイトを開く(小児がんセンター)