感染症・合併症の抑制により治療の質を高め、治療関連死ゼロを目指す

  • 診療科血液内科
  • エリア千葉県千葉市中央区

横田 朗(よこた あきら)先生

千葉市立青葉病院/血液内科 診療局長

横田 朗(よこた あきら)先生

千葉市を含む千葉県北西部における血液腫瘍診療の一翼を担う

当院は千葉市を含む千葉県北西部を主な診療圏としています。千葉市内では当院のほか千葉大学医学部附属病院や千葉県がんセンター等、複数の施設が血液腫瘍の診療を担っています。しかし、診療圏の人口・患者数に比し、病床数は十分とはいえないのが現状です。

当院が現在の地に移転・開院したのは2003年のことです。当時、造血幹細胞移植のために設置された無菌室は2床でした。その後、増加する移植や強力な抗がん剤治療に対応するため、無菌室と同レベルの設備を導入した個室を新たに11床設けています。2003年以降、延入院患者数は年々増加傾向にあり(図1)、疾患別割合では急性白血病、悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫の4疾患で全体の9割近くを占めています(図2)。

同種移植は年間20~25件、70歳以下の骨髄腫のほぼ全例に施行している自家移植は年間5~15件実施しています(図3)。同種移植は血縁者、骨髄バンク、臍帯血バンクの順にドナーを探し、実施比率はおよそ5:3:2です。最近では、状態が良好でなく時間的な余裕があまりない方に対するHLA半合致移植(ハプロ移植)が増加傾向にあります。

図1 延入院患者数の年次推移(千葉市立青葉病院血液内科)

提供:横田朗先生

図2 入院疾患別割合(千葉市立青葉病院血液内科)

提供:横田朗先生

図3 移植件数の年次推移(千葉市立青葉病院)

提供:横田朗先生

チーム医療により入院中・退院後の患者さんをサポート

血液内科常勤医は4名、後期研修医が2名という診療体制です(2017年9月現在)。当科では看護師が高い意識をもって専門的な知識の習得に励んでおり、現在も複数の看護師が造血細胞移植コーディネーター(Hematopoietic Cell Transplant Coordinator;HCTC)の認定取得を目指しています。ファローアップ外来の担当看護師は現在3名ですが、今後順次増員する予定です。

また、病棟では専門の薬剤師、栄養士が入院患者のサポートに当たるとともに、リハビリテーション科のスタッフが移植や長期の抗がん剤治療を施行する全ての患者さんに関わっています。栄養士による食事介入により摂食量が増え、リハビリテーションによって体力の温存が果たされると、治療成績も向上するという印象を抱いています。

ハプロ移植が増加傾向にある中の感染対策

当院の建物は竣工から10年以上が経過していますが、周辺で建設工事等が行われていないこともあり、アスペルギルス感染症に難渋した経験は多くありません。真菌感染対策として、好中球減少が1週間以上持続すると予想される場合はアゾール系抗真菌薬を予防的に投与し、アスペルギルス症の高リスクと考えられる症例にはアイソレーターを使用しています。抗菌薬投与によっても改善しない遷延する発熱に対してはキャンディン系抗真菌薬を使用し、それでも改善しない場合はアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)の使用を考慮します。

また、プロバイオティクスによる感染予防にも注目しています。化学療法を行う全例にプロバイオティクスを行っていますが、今後はその機序を明らかにするために腸内細菌叢の変化を確認していく予定です。

ウイルスに関しては、ハプロ移植が増えていることもあり、サイトメガロウイルス(CMV)とEBウイルス(EBV)に注意しています。特に抗胸腺細胞グロブリン(ATG)を使用する場合、多くの例でCMV抗原血症が陽性となります。CMV感染症はガンシクロビルで対応可能ですが、盲点となりがちなのがCMV網膜炎です。そのため、ATG使用例では早期に眼科の診察を受けていただくようにしています。

初回治療成績が向上するほど二次がんが課題に

私たちは関東造血幹細胞移植共同研究グループ(KSGCT)の共同研究で、同種移植後の二次がんが増加することを報告してきました1)。また、最近ではリンパ腫患者の移植後の治療関連急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群(t-AML/MDS)のリスクに関する、私たちも参加した多施設共同研究が報告されています2)。二次がんのリスクについては同年齢の対照群と比較して議論する必要がありますが、実臨床の患者さんは多くが高齢であり、治療関連の発がんか否かにかかわらず、留意しなければなりません。初回治療の成績が向上すればするほど、二次がんを早期に発見することが次の課題としての比重を増します。当科ではフォローアップ外来でも積極的にがん検診を受けることを勧めています。特に移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)を呈する患者さんでは口腔から食道にかけて発がんがみられることが多いため、内視鏡検査を定期的に実施しています。

移植後の早期死亡リスクの抑制に向けて

当科では、治療関連死をゼロにすることを目標に掲げています。再発・二次がんをゼロにするためには治療薬の進歩を待つ必要がありますが、GVHDを含む合併症の予防を徹底することは現時点でも可能です。感染対策やリハビリテーションと併せて、これら一つ一つを地道に積み上げていくことによって、移植後の早期死亡リスクを抑制していきたいと考えています。

  1. Yokota A, et al.: Bone Marrow Transplant 47(1): 95-100, 2012
  2. Yamasaki S, et al.: Bone Marrow Transplant 52(7): 969-976, 2017

(写真)<br>千葉市立青葉病院血液内科スタッフ

(写真)
千葉市立青葉病院血液内科スタッフ

医療機関名称 千葉市立青葉病院
住所 〒260-0852 千葉県千葉市中央区青葉町1273-2
電話番号 043-227-1131(代表)
医師名 横田 朗(よこた あきら)先生
経歴
1988年
千葉大学医学部卒
2001年より
千葉市立青葉病院勤務
ホームページ https://www.city.chiba.jp/byoin/aoba/aobatop.html外部サイトを開く