道南圏唯一の非血縁者間骨髄移植・臍帯血移植実施施設として、移植医療の発展に貢献

  • 診療科血液内科
  • エリア北海道函館市港町

伊東 慎市(いとう しんいち)先生

市立函館病院/血液内科 医長

伊東 慎市(いとう しんいち)先生

個々の患者さんの病態と状況を鑑みて移植法を選択

当院は2003年に臍帯血移植実施施設、2004年に非血縁者間骨髄移植診療科・採取施設の認定を受けました。北海道内では6番目、道南圏唯一の非血縁者間骨髄移植・臍帯血移植実施施設として、移植医療の発展に貢献することを目指しています。現在は自家末梢血幹細胞移植、血縁者間同種骨髄移植、骨髄バンク移植、臍帯血バンク移植を実施しており、個々の患者さんの病態と状況を鑑みて移植法を選択しています。2016年度は移植を24件実施し、そのうち約70%が自家末梢血幹細胞移植でした。最近、HLA半合致移植(ハプロ移植)も実施しています。

骨髄バンク移植ではHLA一致ドナーから骨髄提供を受けるまで時間を要する場合があることが挙げられます。移植を急ぐ、またはHLA一致ドナーがいない患者さんにも、ハプロ移植は有力な選択肢となります。一方、臍帯血移植はHLA 2座不一致まで実施可能ですが、幹細胞数が少ないため移植後に白血球数が十分に上昇しないことがある、あるいは免疫回復まで時間がかかるため生着後もウイルス感染リスクを有する、といった問題があります。今後、臍帯血移植とハプロ移植の成績を比較する必要はありますが、現状としては、移植タイミングの自由度が高いハプロ移植の役割が大きくなりつつあります。

支持療法の進歩により、高齢患者に対しても治療を考慮できるように

抗がん剤治療や移植を実施する上で、支持療法を欠かすことはできません。制吐剤や抗菌薬・抗真菌薬の進歩に加えて、治療前後の感染管理法が確立してきたことで、より高齢の患者さんに対しても治療を考慮できるようになってきました。一例として、当院では歯科・口腔外科による口腔内の衛生状態の管理を実施するようになって以降、感染症が減少傾向にあります。

地域性との関連は不明ですが、当科の患者さんでは真菌感染症が比較的多く、特に注意を払っています。アスペルギルスやカンジダによる感染症が中心ですが、最近の監視培養ではCandida glabrataなどのnon-albicans Candida属が検出される頻度が上昇しています。ガイドラインに沿って抗真菌薬の予防投与を行い、肺炎を来した場合など、必要性が高いと判断される場合は広い抗真菌スペクトラムを有する抗真菌薬を早期から投与し、重篤な状況に至ることのないよう努めています。

退院後の生活を見据えた治療が重要

当院は道南圏全域の広範な地域を診療圏としており、遠方から時間をかけて通院している患者さんが少なくありません。ご家族が運転する自動車で片道2~3時間かけて通院している方や、離島や下北半島からフェリーや飛行機を利用して通院している方もおられます()。そのため、地理的条件を考慮して治療内容を組み立てることが求められます。入院治療から外来治療への移行においては、通院の頻度や発熱など病状変化時の対応、地元の町立病院との連携が可能であるかなどを考慮する必要があり、これらの要素を鑑みて入院治療の内容と退院時期を計画しています。

また、当科の患者さんは高齢の方が大半を占めており、退院後の生活を見据えた治療を行うことも求められています。移植を施行すると患者さんの体力は著明に低下し、高齢者ではサルコペニアのリスクも高まります。治療の結果として帰宅できない状況を作ってしまってはなりません。治療後に帰宅可能な状態をいかに維持するかが、重要な課題となっています。

抗がん剤による味覚障害や口腔粘膜障害によってもたらされる食欲低下に対しては、栄養管理科との連携の下、栄養管理を十分に行うよう努めています。また、リハビリテーション科との連携の下、移植患者さんに対しては入院時からリハビリテーションを開始し、無菌室内においても可能な運動を継続していただくよう働きかけています。

これらの対応を行っていても治療後の体力低下は避けられませんので、退院後の過ごし方にも配慮します。通所リハビリテーションを利用できる施設を紹介していますが、そうした施設が周辺にない場合は筋力重視型のデイケアサービスの利用をお勧めするなど、体力の維持・向上のために取り得る手段を、可能な限り模索しています。

市立函館病院に通院中の患者さんの居住地(抜粋)と交通手段・所要時間

提供:伊東慎市先生

患者さんが元の生活に近い状況に戻れるよう、最善の選択をすることが使命

血液内科は、基礎研究の成果が比較的早く臨床に結びつく希望がある分野です。その一方、年齢を理由に抗がん剤治療や移植を受けることができない患者さんが、今なお多く存在することも事実です。こうした患者さんに対しては、原疾患の治療に伴う副作用を最小限に抑えつつ、並行して緩和医療を導入していくことも選択肢となります。一人ひとりの患者さんが元の生活に近い状況に戻れるよう最善の選択をすることが血液内科医の使命であり、私たちはその覚悟を携えて患者さんに向き合っていかなければならないと考えています。

医療機関名称 市立函館病院
住所 〒041-8680 北海道函館市港町1-10-1
電話番号 0138-43-2000(代表)
医師名 伊東 慎市(いとう しんいち)先生
経歴
2006年
北海道大学医学部卒
2014年より
市立函館病院勤務
ホームページ http://www.hospital.hakodate.hokkaido.jp/外部サイトを開く