患者さんに安心感を与える医療の提供を目指して

  • 診療科血液内科
  • エリア福岡県北九州市八幡西区

塚田 順一(つかだ じゅんいち)先生

産業医科大学病院/血液内科 診療教授

塚田 順一(つかだ じゅんいち)先生

多彩な専門職から成るチーム医療を実践

当院は北九州市を中心に、人口約110万人を擁する北九州医療圏を診療圏(二次医療圏)としています。血液内科の前身である「化学療法センター」が発足したのは、2005年4月のことです。当時、がん治療における化学療法の進歩に伴い、外来化学療法の社会的ニーズが高まりをみせていました。そうした中、がんを患う勤労者や地域住民の早期の職場・社会復帰を後押しするため、専任スタッフが悪性腫瘍に対する化学療法を行う部署として、同センターが新設されました。その専門性を活かすべく、2007年4月には血液診療部門が移管されて「化学療法センター・血液科」となり、2015年1月に現在の名称である「血液内科」となりました。当院において血液・腫瘍を担当する診療科として、患者さんに安心感を与える医療の提供を目指しています。

当科はISOクラス6に対応する完全無菌室9床と、無菌ベッドを有する病棟(32床)および外来化学療法室(25床)を有しています(2017年9月現在)。2015年の1日当たりの平均外来患者数は37.8人、平均入院患者数は31.5人でした。新規に診断された疾患の内訳としては悪性リンパ腫が最も多く、次いで白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、成人T細胞白血病・リンパ腫といった疾患が多く診断されています。血液専門医・指導医、がん薬物療法専門医・指導医、がん専門薬剤師およびがん化学療法認定看護師など多彩な専門職から成るチーム医療を実践しています。

ハプロ移植に積極的に取り組む

当科における2016年の造血幹細胞移植件数は21件で、多くは白血病に対するものでした。HLA半合致移植(ハプロ移植)にも積極的に取り組んでおり、再発リスクが高い場合はハプロ移植を、再発リスクがさほど高くない場合は臍帯血移植を考慮するという基準で実施しています。

これまでに同種末梢血幹細胞によるハプロ移植を10件以上施行していますが、生着不全や重症の移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)はほとんどみられていません。ハプロ移植は比較的早期の退院が可能であるため、全身状態(performance status;PS)が良好ではない高齢の患者さんに対しても施行を考慮できることが利点です。

造血幹細胞移植においては、PSや日常生活動作(ADL)の保持が目標の1つとなります。そのため、リハビリテーションの早期導入を重視しており、最近では無菌室にエルゴメーターを導入し、活用を推進しています。移植医療の質の向上にチーム医療が果たす役割も大きく、例えば看護師は、ドナーおよび患者さんに対する移植前の説明から移植後のフォローアップまできめ細かに対応し、医師に情報を提供してくれています。

支持療法の進歩が治療成績の向上に寄与

造血器腫瘍の治療においては、ひとたび感染症を合併すると治療が困難な場合が多いため、感染症予防対策とともに経験的治療の重要性が高いといえます。最近では感染症治療薬の進歩に加えて早期介入の徹底が成果を挙げつつあり、画像所見などで治療が困難と予測された感染症においても、介入によって病態の改善が得られ、合併症も軽度にとどまったケースを多く経験しています。造血器腫瘍の治療成績の向上には、分子標的薬の導入のみならず、無菌管理を含めた支持療法の進歩によって、従来の化学療法の有効性を最大限に引き出し、安全に使用できる環境が整備されたことも寄与していると思われます。

治療の適応を患者さんごとに判定できる評価指標の創出が課題

私たちに課せられた使命の1つに、できる限り多くの高齢患者を社会復帰に導くことがあります。そのためには、高齢患者に対する化学療法や造血幹細胞移植の適応を判定しうるシステムの確立が必要です。

高齢患者においては、治療によって病態は改善しても、合併症のため社会復帰が困難なケースがある一方、有効な治療法があるにもかかわらず、年齢を理由にその適応ではないと判断されるケースも多いと思われます。年齢のみを基準にするのではなく、患者さんごとに適切な治療を選択できる、多因子から成る評価指標を創出する必要があります。超高齢社会を迎えたわが国の喫緊の課題といえるでしょう。

地域連携に基づく有機的で広範な診療体制の構築に向けて

当科は日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の一員として全国規模の臨床試験に参画するとともに、地域に根ざした臨床試験も推進しています。また、当科の入院病棟は現在、年間を通じてほぼフル稼働の状態ですが、今後は地域連携に基づく有機的で広範な診療体制の構築に向けて、その方向性を打ち出していきたいと考えています。

血液内科は、血液疾患に関する高度な臨床的技能はもとより、様々な臓器の合併症への対応など、血液以外の疾患の管理能力も求められる診療科です。また、先端医療の基礎研究、臨床研究を身近に感じられる診療科でもあります。血液内科に参集された多くの若手医師に、治癒を目指したアプローチが可能なその魅力に触れてもらいたいと願っています。

産業医科大学病院血液内科スタッフ

提供:塚田順一先生

医療機関名称 産業医科大学病院
住所 〒807-8556 福岡県北九州市八幡西区医生ヶ丘1-1
電話番号 093-603-1611(代表)
医師名 塚田 順一(つかだ じゅんいち)先生
経歴
1984年
産業医科大学医学部卒
2015年より
産業医科大学病院 血液内科 診療教授
ホームページ http://www.uoeh-u.ac.jp/外部サイトを開く