患者さん一人ひとりへのきめ細かな対応が、質の高い医療の礎に

  • 診療科血液科
  • エリア徳島県小松島市小松島町

後藤 哲也(ごとう てつや)先生

日本赤十字社 徳島赤十字病院/副院長 (兼) 医療・がん相談支援センター長

後藤 哲也(ごとう てつや)先生

チーム医療の実践と、それを支えるスタッフの活躍が高度医療の質を担保

徳島県内の移植認定施設は徳島大学病院と当院の2施設です。この2施設で県内全域をカバーしていますが、高齢化率が高い徳島県は移植適応とならない患者さんも多く、当院における移植実施件数は年間10件前後です。2016年は自家末梢血幹細胞移植3件、血縁者間末梢血幹細胞移植1件、非血縁者間骨髄移植4件、臍帯血移植1件でした。全国的には年間数十件の移植を実施する施設が数多くある中、当院のようないわゆる“ローボリュームセンター”が高度医療の質を担保するには、チーム医療の実践と、それを支えるスタッフの活躍が欠かせません。

当院では看護師が中心になり、移植に関連する様々な取り組みを推進しています。例えば、医師には話しづらいと感じる患者さんの疑問や不安を解消するために「質問促進パンフレット」を導入したり、移植や複数回の化学療法を受ける患者さんとそのご家族に対して、支持療法の必要性などを学んでいただくグループラーニングを定期的に開催したりしています。患者さんからは「病気と向き合うことができた」「自分ひとりで闘っているという孤独から解放されて安心感が得られた」「病気を知ることで闘病意欲が高まった」などの声が上がっています。

食事面でも、治療後、食欲が低下した患者さんには特別メニューを用意したり、栄養士が病室に赴き、患者さんが希望する食事内容に調整したりすることもあります。骨髄バンクのドナーには、感謝の気持ちを込めて採取翌日の昼食に「サンキューランチ」を提供しています。また、ローテートで当院を訪れた医師からよく指摘される点ですが、診療科間の垣根が低く、他科連携が円滑に行われていることも当院の特徴です。その背景には、医師全員が朝8時45分に集合し、開催されるブリーフィング型の朝礼の影響があるように思います。患者さんを中心に多職種が丁寧かつ積極的に関与、連携することにより、ローボリュームセンターでありながらも質の高い医療を維持していくことが、私たちの目指すところです。

遺伝子検査の院内実施や化学療法室の拡充を予定

血液科には私を含めて血液専門医が5名在籍しています(2017年9月現在)。無菌病棟にはベッドが17床あり、2016年度の外来患者数は延べ5,543人、在院患者数は延べ6,631人、新入院患者数は271人という状況です。現在、遺伝子検査を院内で実施する体制を整備しており、2018年度内の開始を目指しています。また、当院は新棟を建設(2017年11月より稼働)するとともに既存建物を改修中であり、2018年6月にグランドオープンを予定しています。これに伴い、外来化学療法室も拡充する計画です。外来治療の質を高め、患者さんのQOL向上に役立てたいと思っています。

移植成績としては、急性リンパ性白血病の長期生存率が60%台、骨髄異形成症候群では50%台です。しかし、急性骨髄性白血病では、標準的な第二寛解期の移植例において約70%の長期生存を得ているものの、その3分の2を占める非寛解時の移植成績は生存期間の中央値が243.4日と不良です。このような症例のほとんどは予後不良の染色体異常を有する高齢の患者さんですので、新たな治療戦略が求められています。今後は、多施設臨床試験として参加しているハプロ移植の特性を生かして、疾患コントロールが良い時期にタイミング良く移植に持ち込むことにより、予後不良例の移植成績向上を図りたいと考えています。

末梢挿入式中心静脈カテーテルの導入などにより感染対策を強化

感染管理に関して、新棟建設工事が行われてはいたものの、危惧されたアスペルギルス症などの真菌感染症は発生していません。移植患者さんにおける真菌感染対策としては、既往のない場合にはフルコナゾール(FLCZ)を用いています。真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症には、経験的治療としてアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)を選択する機会が増えています。標的治療では、肺アスペルギルス症に対してはL-AMBもしくはボリコナゾール(VRCZ)を用いています。

末梢挿入式中心静脈カテーテルを早くから導入していることも、感染リスクの低減に寄与しています。看護師がカテーテル部位のドレッシング法に工夫を凝らすなど、血流感染に対して、当院では先進的かつ有効な取り組みを継続してきたと自負しています。

看護力をベースにしたきめ細かな対応

かつて、私の恩師が「移植は医者が行うものではない。特に看護師の役割が大切なんだ」と話していたのを思い出します。私が20年ほど前に当院に赴任し、血液科を立ち上げたのも、移植医療に対応できるだけの十分な看護力があると判断したからです。その後、教育担当の副院長の立場で多くの意見を聞き入れ、臨床に活かしてきました。繰り返しになりますが、当院の特徴はチーム医療の実践と、それを支える特に看護力をベースとしたきめ細かな対応です()。支持療法や精神ケアをはじめとする患者さん一人ひとりへの丁寧な対応が、地方のローボリュームセンターであるにもかかわらず質の高い医療を維持できている大きな要因だと考えています。

臨床経過図の一例

提供:後藤哲也先生

医療機関名称 日本赤十字社 徳島赤十字病院
住所 〒773-8502 徳島県小松島市小松島町字井利ノ口103
電話番号 0885-32-2555(代表)
医師名 後藤 哲也(ごとう てつや)先生
経歴
1981年
徳島大学医学部卒
1998年より
徳島赤十字病院勤務
ホームページ http://www.tokushima-med.jrc.or.jp/外部サイトを開く