高水準の教育・臨床・研究とワーク・ライフ・バランスの両立を目指して

  • 診療科血液内科
  • エリア東京都新宿区河田町

篠原 明仁(しのはら あきひと)先生

東京女子医科大学/血液内科 准講師

篠原 明仁(しのはら あきひと)先生

専門診療科との連携の下、高齢者・高度合併症例を含む多様な症例に対応

東京都心に位置している当院には、近隣からだけでなく遠方からも多くの患者さんが来院されます。当院は心臓病・消化器病・腎臓病・糖尿病・内分泌疾患・リウマチ性疾患などを対象とする各専門診療センターを有しています。そのため、当血液内科でも高齢者や高度な合併症を有する患者さんを診療する機会が多いのが特徴です。同時に、専門診療科からのバックアップを受けやすい環境にあるとも言えます。

当科は40床の病床を有し(うち、無菌個室9床)、スタッフ9名、後期研修医7名という体制で診療にあたっています(2017年4月現在)。外来患者数は1日約70人、初診患者数は年間約900人です。入院患者数は急性白血病が年間延べ約40人、非ホジキンリンパ腫が年間延べ約80人で、近年はリンパ腫の患者さんが増加傾向にあります。

同種骨髄移植は1985年、非血縁者間骨髄バンク移植は1995年に開始しています。2013年4月に田中淳司教授が就任して以降、無菌室の増床や移植スタッフの増員に伴い移植件数が徐々に増加しており、最近では年間20例超の移植を施行しています。標準的な移植方法を偏りなく実施し、研修中の医師に基本をしっかりと身につけてもらうことを大事にしています。その一方、高度合併症を有する患者さんには関連診療科の助言を得ながら一定の安全性を保ちつつ難しい移植方法も行っています。その他、70歳前後を上限とした高齢者への移植や、HLA半合致移植(ハプロ移植)にも取り組んでいます。

基礎研究から臨床研究への橋渡しを通じて、新規治療法の確立を目指す

移植を含む造血器腫瘍の治療においては個々の患者さんに応じた対応が求められ、医師個人の資質に拠る「職人芸」が貢献する場面は多々あります。しかし職人芸に頼るばかりでは、進歩はありません。治療成績を互いに検討すること、また、治療の標準化を目指すことが必要です。そのためには治療内容を記述し、論文の形で発表することが不可欠ですので、当科では移植に関連した基礎研究・臨床研究を積極的に進めています。

近年のがん基礎研究の進歩により、がんは「動的」な存在であることが分かりました。がんは常に個々の患者さんの中で変化し続けており、その変化に対応できる医療が求められています。当科としては、個別の患者さんの「がんの変化」を初発時・再発時、治療前後など様々なシチュエーションでサンプルを収集し、解析できる体制作りを目指しています。

基礎研究と臨床研究の橋渡しであるtranslational researchも大切です。その一例として、自家培養NK細胞による治療に関する研究があります。NK細胞はMHCクラスⅠ分子の発現レベルが低いがん細胞に対して細胞傷害能を示すものの、同分子を発現する正常な自己細胞は攻撃しないという性質を有しています。私たちは現在、B細胞性悪性リンパ腫に対して自家培養NK細胞とリツキシマブを併用する治療の安全性と有効性を検証する第Ⅰ/Ⅱ相試験を行っています。今の段階では安全性の確認が主目的ですが、この治療法の有効性が示されれば、新規抗体医薬との併用についても研究を進めたいと考えています。また、倫理的な問題を解決する必要はありますが、同種移植時にドナー由来NK細胞を移植することにより、移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)のリスクを抑えつつ腫瘍細胞の除去効果を高めた新しい治療法を確立できる可能性にも期待しています()。

当科は日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)や関東造血幹細胞移植共同研究グループ(KSGCT)、日本細胞移植研究会(JSCT研究会)、関東・東北骨髄腫カンファレンスなどの多施設共同研究にも積極的に参画しています。また、私を含む複数の医師が日本造血細胞移植学会のワーキンググループに所属し、研究提案や共同研究を行っています。

同種造血幹細胞移植に期待されるドナー由来免疫細胞の役割

提供:篠原明仁先生

育児をしながら働き続けることができる環境作りに、医局全体で取り組む

当学はわが国唯一の女子医科大学です。男性医師は全員が他大学の出身者であり、医局が特定大学の出身者に偏っていないことが特徴の1つです。この点を魅力に感じて赴任してきた医師もいます。中でも当科は医局員の半数以上が40歳未満で、若手医師の多くは女性です。育児中のスタッフも多いため、病棟の状況を考慮しながらではありますが、17時以降は当直診療を基本としています。加えて当直後の早退のバックアップや休日の代理診療にも柔軟に対応できる体制を敷き、家庭と仕事の両立を図っています。

血液内科でこうした働き方が可能な施設は珍しいかもしれません。高水準の教育・臨床・研究の実践を目指す中で、いかにワーク・ライフ・バランスを実現・維持するかは時に悩ましい問題となるのですが、同じ悩みを共有する仲間が多いことは強みでもあります。若手医師が育児をしながら専門医取得を目指すことができる環境作りに、医局全体で取り組んでいます。

治癒、社会復帰を目指す患者さんの思いに応えられるよう、努力を続けていきたい

血液内科は、がん診療科の中で最も“science”としての進歩が早い領域だと思います。患者さんの社会的背景や合併症は様々であり1例として同じ症例はなく、患者さん・ご家族の期待に応えるためには医師としての総合力と、常なる進歩が求められる領域でもあります。その分、一生をかける意義のある仕事と感じています。

私が医師になった頃に最初の分子標的薬が臨床応用され、その後、治療成績の目覚ましい向上が果たされました。一方、新薬だけでは治癒しえない患者さんの存在もあらためて浮き彫りとなり、移植医療の役割は一層大きくなっています。

長期生存が期待できるようになり、合併症の管理を含めて、1人1人の患者さんと関わる時間も長くなりました。そのため、最近では治癒だけでなくその先にある社会復帰を願う患者さんの声を聞く機会が多くなりました。医師としてその思いに応えられるよう努力していきたいと思いますし、そうした患者さんに支えていただくことによって、続けられているとも感じています。血液内科は、若い医師たちにぜひ目指してもらいたい領域です。

医療機関名称 東京女子医科大学病院
住所 〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
電話番号 03-3353-8111(代表)
医師名 篠原 明仁(しのはら あきひと)先生
経歴
2001年
東京大学医学部卒
2014年より
東京女子医科大学病院勤務
ホームページ http://www.twmu.ac.jp/dh/外部サイトを開く(血液内科)