多施設共同研究を牽引し、日本発の革新的なエビデンスの発信を目指す

  • 診療科血液・呼吸器・腫瘍内科
  • エリア佐賀県佐賀市鍋島

木村 晋也(きむら しんや)先生

佐賀大学医学部 内科学/血液・呼吸器・腫瘍内科 教授

木村 晋也(きむら しんや)先生

佐賀県内で発生する重篤な血液疾患の診療状況を把握

佐賀県において、血液悪性腫瘍をはじめとする重篤な血液疾患を診療可能な施設は、当院と佐賀県医療センター好生館、および唐津赤十字病院の3施設です。当院以外の2施設にも当科から医局員が出向していますので、当科では県内で発生する重篤な血液疾患の診療状況を概ね把握していることになります。

当科では、私を含む7人の血液内科医が中心となって血液疾患を診療しています。慢性骨髄性白血病に関しては、佐賀県内におられる130~140人の患者さんの約8割を私が診療しており、先の2施設と合わせ、県全体の診療状況を当科で確認できます。また、県内のみならず九州の他県や、より遠方から外来に訪れる患者さんもおられます。

移植数が近年著しく増加し、ハプロ移植も積極的に実施

私が赴任した2009年当時、造血細胞移植の実施数は年間2~3件でしたが、ここ最近は2017年13件、2018年19件、2019年16件と増加しています。2019年の造血細胞移植の内訳は、自家移植5件、同種移植11件でした。2019年の移植対象疾患の内訳は、急性骨髄性白血病2件、急性リンパ性白血病3件、多発性骨髄腫3件、成人T細胞性白血病3件、悪性リンパ腫3件、再生不良性貧血1件、非定型慢性骨髄性白血病 1件となっています。最近はHLA半合致移植(ハプロ移植)が増え、2019年の血縁者間移植11件中8件がハプロ移植でした。

当院では、中央診療機能の拡充と病棟機能の向上を目指した再整備事業を数年にわたって進めてきました。これにより血液内科の診療機能も拡充し、外来化学療法室(写真)はこれまでの15床から22床に増床しました。また、無菌室は4床から8床に増床しました。外来化学療法室では必ず1名の腫瘍内科チームのスタッフが管理にあたっており、レジメンなどを各科とダブルチェックしています。当該科間のスムーズな連携と安全性の担保の両立が果たされています。

外来化学療法室

提供:木村晋也先生

G-CSF製剤や抗真菌薬の進歩が予後改善に貢献

血液腫瘍患者さんの予後改善は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤や抗真菌薬の進歩なしには語れません。中でも私は、アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)とボリコナゾール(VRCZ)の貢献度が高いと感じています。いずれも登場から10年以上が経過していますが、私たち血液内科の臨床に大いに役立っています。アムホテリシンBがリポソーム製剤化される以前は、腎機能への影響などから切り札的な投与のみにならざるを得ませんでしたが、L-AMBが登場して以降は、使用の幅が広がりました。

ダサチニブ中止試験であるDADI trialなど多施設共同研究を牽引

当科では臨床研究に積極的に取り組んでおり、慢性骨髄性白血病に関しては私が代表となり4つの多施設共同研究を進めています。その1つが、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ダサチニブの中止試験であるDADI trialです。2次使用のダサチニブによって1年以上の分子遺伝学的完全寛解(complete molecular remission;CMR)を達成し、ダサチニブを中止し得た慢性骨髄性白血病患者63例のうち、CMRを1年以上維持したのは30例(48%)でした。また、分子再発を来した33例にダサチニブを再開したところ、29例が3ヵ月以内、4例が6ヵ月以内にCMRを達成しました1)。第二世代TKIの中止試験としては世界初の論文となり、既に200回以上他の論文で引用され、多くのガイドラインでも、その根拠として引用されています。また1次使用のダサチニブの中止試験 1st DADI trialも研究が完了し、その結果を報告しました2)。日本の臨床研究は欧米の後追いになることが多いのですが、今後もこのように革新的なエビデンスを積極的に発信していきたいと考えています。

その他、当科では京都大学と長崎大学と共同で、化学療法後の再発・難治性成人T細胞白血病(ATL)に対する核酸逆転写酵素阻害薬アバカビルの有用性を検討する医師主導治験(UMIN000018897)や、MEK阻害薬トラメチニブによる移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)抑制と移植片対腫瘍(graft versus tumor;GVT)効果の温存を同時に目指した治療の開発などに取り組んでいます。

究極のゴールである経口薬のみによる治癒を目指して

私は医局の若いスタッフに、年に1報、英文での症例報告を投稿することを奨励しています。症例報告を通じて希少な症例や奏効例など施設固有の情報を国際的に共有することで、治療成績の向上に少しでも貢献できればと考えています。多くのスタッフが実践しており、医局から年間10報程度の英文症例報告をコンスタントに発表しています。こうした施設は、全国的にもあまり多くないと自負しています。

造血細胞移植はもちろん有力な治療手段ですが、慢性骨髄性白血病におけるDADI trialやイマチニブ中止試験であるSTIM trial3)の成績などからも、経口薬のみによる治癒への期待が高まっています。今後、私たちは慢性骨髄性白血病以外にもその可能性を見出すべく、トランスレーショナルリサーチ等を通じて、この究極のゴールを目指していきます。

  1. DADI Trial Group: Lancet Haematol 2(12): e528-35, 2015
  2. 1st DADI Trial Group: Lancet Haematol 7(3): e218-25, 2020
  3. Mahon FX, et al.: Lancet Oncol 11(11): 1029-1035, 2010
医療機関名称 佐賀大学医学部附属病院
住所 〒849-8501 佐賀県佐賀市鍋島5-1-1
電話番号 0952-31-6511(代表)
医師名 木村 晋也(きむら しんや)先生
経歴
1986年
自治医科大学医学部卒
2009年より
佐賀大学医学部 血液・呼吸器・腫瘍内科 教授
ホームページ http://www.saga-hor.jp/main/外部サイトを開く(血液・呼吸器・腫瘍内科)