「遺伝子変異解析に豊富な実績」「研究マインドを持つ血液内科医の育成に努める」

  • 診療科血液内科学
  • エリア東京都文京区千駄木

山口 博樹(やまぐち ひろき)先生

日本医科大学/血液内科学 大学院教授

山口 博樹(やまぐち ひろき)先生

関連5施設の血液内科がグループを形成し、臨床・研究・教育の充実を図る

日本医科大学付属病院血液内科では年間約30件の造血幹細胞移植を実施しており、移植を開始した1995年から2019年4月までの期間の総件数は500件を超えています。2014年に竣工した新病棟では当科の治療環境も刷新されました。45床中6床の無菌室と、廊下を含む無菌エリアの中で、高度な骨髄抑制が懸念される患者さんの治療等を行っています。

常勤医師は14名です(2021年5月現在)。他部門・他施設との連携の下で診療にあたっています。例えば、他施設で移植後、呼吸器疾患等の合併症が重篤化した救急患者を受け入れるケースが最近増えていますが、これは当院が誇る集中治療室との密な連携により果たされるものです。また、当院および日本医科大学千葉北総病院、日本医科大学多摩永山病院、横浜南共済病院、湘南東部病院の5施設の血液内科で「日本医科大学血液内科診療グループ」を形成しており、相互に連携しながら臨床・研究・教育の充実を図っています。

遺伝子研究に加え、変異解析を簡便かつ効率的に実施するための機器開発などにも注力

本学の教育理念である「愛と研究心を有する質の高い医師と医学者の育成」との言葉にもある通り、当科は研究マインドを持った血液内科医の育成を1つの特徴としています 。

主な研究内容を紹介します。AMLではFLT3-ITD、NPM1CEBPAKITDNMT3AIDH1/2TET2、等の遺伝子変異が知られており、当科ではこれらの臨床的特徴と予後の関連について研究しています。例えば、微小なKIT変異陽性白血病クローンがAML初発時から存在し、再発時に増加すること1)t(8;21)inv16を認めるCBF-AMLではKITD816変異は細胞増殖活性が高く他の変異と比べ予後不良であること2,3)、初発時にDNMT3A変異が認められた場合には、再発時に予後不良のFLT3-ITD変異が高率に付加されること4)、次世代シークエンサーを用いて遺伝子変異の網羅的検索を行ったところ、遺伝子変異を3つ以上有するcomplex genetic abnormality(CGA)を認める症例は有意に予後不良であること5)DNMT3ATET2IDH1/2といったメチル化制御遺伝子変異のいずれかに変異を認めると予後不良であることを明らかにしました6)。また欧米のガイドラインではFLT3-ITDのアレル比(AR)が低くNPM1変異陽性のAMLは予後良好で第一寛解期に同種同血幹細胞移植の適応がないとしておりますが、自分たちの研究ではこのAMLは予後良好ではなく予後中間程度で、第一寛解期に移植をしないと予後不良になることを示して反論をしております7)

FLT3-ITD陰性症例における予後の検討

7)より引用

BMFに関しては、その一病態である先天性角化不全症(dyskeratosis congenita;DKC)の約6割で原因遺伝子が同定されており、テロメラーゼ複合体を構成する遺伝子群であるDKC1TERCTERT等に変異が認められることがわかっています。私たちは、これらテロメア制御遺伝子の変異が、一部の再生不良性貧血(aplastic anemia;AA)や骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes;MDS)にも認められることと、特徴的な身体所見を伴わず緩徐に発症する不全型DKCが存在することを報告しています8-12)

不全型DKCがAAやMDSと診断され、効果の得られない免疫抑制療法が施行されることがあるため、不全型DKCの鑑別は極めて重要です。同様に、血縁間同種移植の際に、健常人と区別困難な軽症の不全型DKCの同胞がドナーに選ばれるケースがあることからも、不全型DKCの鑑別の重要性を窺い知れます。そこで私たちは、DKCおよび不全型DKCのスクリーニング法として、テロメア長測定の意義や次世代シークエンサーを用いた新規の原因遺伝子探索に関する研究を進めています。

遺伝子変異を簡便かつ効率的に解析し、臨床面でより役立てるための取り組みも重要です。私たちは、血液をアプライ後、約2時間で解析結果が得られる全自動化遺伝子変異検出機器の開発や、末梢血や骨髄が塗抹されたスライドガラスからのDNA抽出とその高感度化による遺伝子変異解析等にも注力しています。

血液内科は内科医が治療の中心を担い、活躍することができる場

血液内科医の不足が危惧されていますが、血液内科の魅力として私が若手医師や医学生に訴えたいのは、「血液内科は内科医が治療の中心を担い、活躍することができる場であり、研究の進展も目覚ましい」という点です。他の悪性腫瘍であれば、完治を目指す上で有力な治療選択肢は、手術です。血液内科でこれにあたるのは造血幹細胞移植であり、内科医自らの力で完治を目指すことができます。容態の急変や重症化に遭遇する場面もありますが、起死回生の一手により患者さんの命を救うことができたときに、血液内科医としての喜びを感じます。

また、血液腫瘍は固形腫瘍に比べて遺伝子変異の数が少なく、分子標的薬が奏効しやすいということは、治療上、大きなアドバンテージです。リツキシマブなどの抗体薬やイマチニブといった分子標的薬の成功が、これを物語っています。腫瘍細胞を培養できるという特性から、興味深い基礎研究テーマに巡り合う機会も多いはずです。私たちは、研究マインドを強く持ち、その成果を臨床に結び付けたいと願う血液内科医の成長と活躍を支援します。

  1. Wakita S, et al.: Leukemia. 25(9): 1423-1432, 2011
  2. Omori I, et al. Exp Hematol. 52: 56-64, 2017
  3. Yui S, et al. Ann Hematol. 96: 1641-1652, 2017
  4. Wakita S, et al.: Leukemia 27(5): 1044-1052, 2013
  5. Wakita S, et al.: Leukemia 30(3): 545-554, 2016
  6. Ryotokuji T, et al.: Haematologica 101(9): 1074-1081, 2016.
  7. Sakaguchi M, et al: Blood Adv. 2(20):2744-2754, 2018.
  8. Yamaguchi H, et al.: Blood 102(3): 916-918, 2003
  9. Fogarty PF, et al.: Lancet 362(9396): 1628-1630, 2003
  10. Yamaguchi H, et al.: NEJM 352(14): 1413-1424, 2005
  11. Takeuchi J, et al.: Blood Cells Mol Dis 40(2): 185-191, 2008
  12. Yamaguchi H, et al.: Br J Haematol 150(6): 725-727, 2010
医療機関名称 日本医科大学付属病院
住所 〒113-8603 東京都文京区千駄木1-1-5
電話番号 03-3822-2131(代表)
医師名 山口 博樹(やまぐち ひろき)先生
経歴
1993年
日本医科大学医学部卒
1993年より
日本医科大学勤務
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