小児白血病の治療成績の改善に伴い、長期にわたる合併症抑制とQOL向上が課題に

  • 診療科血液腫瘍科
  • エリア埼玉県さいたま市中央区

康 勝好(こう かつよし)先生

埼玉県立小児医療センター/血液腫瘍科 科長 兼 部長

康 勝好(こう かつよし)先生

小児がん拠点病院として地域小児がん治療の中核を担う

埼玉県立小児医療センターは30年以上にわたる小児がん診療の実績を有し、地域における小児がん治療の中核的役割を担ってきました。2013年には全国15施設の「小児がん拠点病院」の1つに指定され、血液腫瘍科における1日平均入院患者数は、約50名と非常に多くなっています。また、再発・難治例については、埼玉県外も含めて増加傾向です。その要因として、埼玉県内の血液内科との連携が進んだことが挙げられ、特に高校生の患者が増加しています。

県内の小児がん発生数は年間約150~200例で、血液腫瘍が約4割を占めます。当科は県内の初発例の約4割をカバーしており、再発・難治例も多く診療しています。さらに、2016年12月のさいたま新都心へ移転後は、無菌病棟(28床)の新設や小児集中治療室(PICU)の拡充が果たされ、より安全で高度な医療提供が可能となりました。また、これまでも当センターに併設された特別支援学校で小・中学生への教育を支援してきましたが、移転後は高校生への教育支援にも注力しています。

多くの小児白血病の患者さんを治療し、臨床試験へ参加

当科における初発の外来患者数は急性リンパ性白血病(ALL)が年間20例前後、急性骨髄性白血病(AML)が年間6~10例前後です。ALL・AMLともに日本小児がん研究グループ(JCCG)の臨床試験に積極的に参加しており、登録症例数は日本一です。

また、当科での小児の造血幹細胞移植施行件数は全国でも上位に位置しており、2019年度は、自家と同種で計26件施行しています()。第一寛解期に移植適応となる患児の割合はALLで約5%、AMLで約20%ですが、近年は少子化のためHLA一致同胞がいる例が少ないことから、非血縁者間臍帯血移植を選択するケースが増加しています。これは私たちが、意思をはっきり表明できない子どもの人権を尊重し、特に5歳以下の子どもをドナーにすることは避けるようにしているためでもあります。当科では、比較的体重が低い症例や、骨髄バンクからの移植を待つ余裕のない症例に対して臍帯血移植を選択しており、HLA一致同胞からの移植や非血縁者間骨髄移植とほぼ同等の治療成績を得ています。

埼玉県立小児医療センターにおける造血幹細胞移植施行件数の年次推移

提供:康勝好先生

患児にとって辛い経験となる重篤感染症の予防と治療が重要

治療中に重篤な感染症を発症すると患児にとって辛い経験になりますので、感染症の予防と治療は非常に重要です。当科では細菌の耐性誘導を抑制することも同時に重視しており、抗菌薬を予防的に投与するのはAMLの症例とALLの寛解導入療法時、移植時のみとしています。

真菌感染症に対しては、ALLの寛解導入療法およびAML治療の全コースで抗真菌薬を予防的に投与しています。移植時は、自家移植ではフルコナゾール(FLCZ)を、同種移植ではミカファンギン(MCFG)を、それぞれ予防的に投与しています。まれにアスペルギルスのブレイクスルーが疑われる症例が発生しますが、その場合はボリコナゾール(VRCZ)を投与します。VRCZを投与しても血中濃度が上がらない高代謝型の症例やVRCZ無効の症例に対してはアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)を用いています。

ウイルス感染症に対しては、綿密なモニタリングと先制攻撃的治療を行っていますが、他科の患者さんや訪問者の中での帯状疱疹の発生にも注意を払わなければなりません。水痘ワクチンが2014年に定期予防接種に移行されましたが、今後さらなる啓発を進め、接種率を上げる必要があると考えています。

より高質な治癒とQOLの向上を目指すために

小児白血病の治療成績が改善している現在、より高質な治癒とQOLの向上を目指すことが重要になってきています。長期合併症の抑制もその1つであり、成長・精神発達の遅延や、性腺機能障害、臓器障害、二次がんの発生等に留意しなければなりません。長期合併症の要因となる抗がん剤の投与や放射線照射を必要最小限に抑える工夫が必要であり、臨床試験においても、予防的な頭蓋放射線照射を行わないプロトコールが実施されています。成長ホルモン分泌や性腺機能に関しては、内分泌代謝の専門医との連携の下、必要に応じてホルモン補充療法の実施等が検討されます。

日本の小児がん医療体制の充実に向けて

日本の小児がん医療体制に目を向けると、小児がん診療に携わる医療機関は数多く存在する一方、正確に診断できる専門家の数はまだ不足しているのが現状です。また、再発・難治例の集約化が十分に行われておらず、一部で適切でない治療が行われている場合があることも問題です。今後は、小児がん拠点病院を中心とした連携と役割分担を強化していく必要があります。

また、白血病の初発例に対する治療成績は向上していますが、今後は再発・難治例を救うことができる新規治療法の開発にも力を入れていかなければなりません。臨床試験を迅速に進めるため、各医療機関の協力体制をこれまで以上に強化することも大切だと考えています。

医療機関名称 埼玉県立小児医療センター
住所 〒330-8777 埼玉県さいたま市中央区新都心1番地2
電話番号 048-601-2200(代表)
医師名 康 勝好(こう かつよし)先生
経歴
1992年
東京大学医学部卒
2009年より
埼玉県立小児医療センター勤務
ホームページ https://www.pref.saitama.lg.jp/scm-c/外部サイトを開く