治療機会を失わないために、少しでも疑わしい症状があればご相談ください

  • 診療科循環器内科
  • エリア静岡県富士宮市

佐藤 洋(さとう ひろし)先生

富士宮市立病院 院長/循環器内科

佐藤 洋(さとう ひろし)先生

富士宮医療圏の中心施設として地域医療に貢献

当院は静岡県富士宮市の中心部に位置し、一般病棟300床、地域包括ケア病棟50床を有する公立総合病院です(2019年10月に新しい地域包括ケア病棟を開設予定)。富士宮医療圏の中心施設であり、地域医療支援病院の承認も取得しています。私の専門である循環器内科では、緊急性の高い虚血性心疾患などに365日24時間体制で対応しています。また、静岡県東部医療圏では東部地区の拠点施設として重要な役割を担っています。2018年度からは、浜松医科大学病院(以下大学病院)との連携の下、不整脈のアブレーション治療を開始しました。

私は大学病院に20年間勤務していましたが、その間にファブリー病の診療に携わり、ファブリー病のバイオマーカーとして注目されるグロボトリアオシルスフィンゴシン(Lyso-Gb3)の共同研究などにも参加してきました。現在、当科では大学病院やその関連病院とともに、心肥大患者を対象としたファブリー病のハイリスクスクリーニング研究を行っています。

ファブリー病は病型と性別により異なる臨床経過をたどる

ファブリー病はX染色体依存性の遺伝性疾患です。原因はライソゾームに存在する加水分解酵素の一つであるα-ガラクトシダーゼ(α-Gal)の欠損あるいは活性低下で、細胞内に糖脂質グロボトリアオシルセラミド(Gb3)が蓄積し、様々な組織・臓器に障害を及ぼします。

ファブリー病は、病型と性別により異なる臨床経過をたどります。男性患者の病型は大きく二つに分けられ、小児期から四肢末端の灼熱痛や低汗症、被角血管腫などが現れ、その後、経過とともに心臓や腎臓、脳の臓器障害が進行する古典型と、発症年齢が遅く、成人以降にこれらの重要臓器に障害が現れる遅発型があります。ヘテロ接合体の女性患者は、無症状のまま経過するか、発症したとしても軽症にとどまることが多いですが、重症例では男性と同様、中高年以降に重要臓器に障害が現れます。

循環器領域では原因不明の心肥大所見が鑑別点に

ファブリー病診断の基本は、α-Gal酵素活性の測定です。男性患者では、この酵素活性によりほぼ確定診断ができますが、女性患者ではα-Gal酵素活性が正常範囲を示す場合もあるため、酵素活性だけでは診断できません。そのため、家族歴を確認した上で、血中・尿中の蓄積脂質(Gb3)の確認や心筋・腎組織の生検、および遺伝子解析等の結果に基づき総合的に判断します。

循環器領域で注意していただきたいのは、心肥大の存在です。新生児スクリーニングでのファブリー病の有病率は、イタリアで0.03%(新生男児37,104例中12例)1)という報告がある一方、心肥大患者を対象としたハイリスクスクリーニングでは男性患者の1.5%(278例中4例)2)、0.9%(328例中3例)3)、女性患者の1.1%(180例中2例)3)、12%(34例中4例)4)といった高い有病率が報告されています。

心肥大は病期によって異なる像を呈し、初期には進行性でびまん性の左室肥大が認められます。この時期の病態は肥大型心筋症に類似しているため、臨床的に肥大型心筋症と診断されている場合があります。進行期には心筋の線維化に伴い左室肥大の退縮や左室後壁基部の限局性菲薄化などが出現します。従って、中高年で心肥大を発症し、重症弁膜症や重症高血圧が原因でない場合、遅発型や女性のファブリー病が原因である可能性がありますのでご注意ください。ファブリー病に特徴的な心電図所見として、PQ時間の短縮が知られています5)が、心電図のみで診断することは不可能です。心エコーやMRIなど各種検査が可能な施設にご相談ください。

酵素補充療法は早期開始が望ましい

根本治療が確立している遺伝性疾患が少ない中、ファブリー病に対してはα-Gal酵素製剤を2週間に1回点滴静注する酵素補充療法があります。酵素補充療法により心機能や腎機能の維持・安定化が期待できます6, 7)が、その効果を最大限に引き出すためには、臓器障害が進行してしまう前の早期から治療を開始することが望ましいと言えます。最近では、α-Galの構造を安定化し、酵素活性を上昇させるシャペロン療法という新しい治療法も登場しています。

これらの根本治療とともに、以前から行われてきた対症療法、降圧療法や不整脈に対するデバイス治療なども同様に重要であり、開始時期を逸することのないよう注意深く経過観察することが大切です。

少しでも疑わしければご相談を

ファブリー病は、見過ごされている可能性が高い疾患です。治療法が確立していますので、早期に診断し、治療に結び付けていただきたいと思います。家系内に四肢末端疼痛や低汗症の症状を経験している方がいたり、若年での心臓突然死例、透析例、脳卒中発症例がいたりする場合は、ファブリー病が潜んでいる可能性があります。こうした家族歴や臨床症状から少しでも疑わしいと思われた患者さんがいる場合は、遠慮なくご相談ください。

  1. Spada M, et al.: Am J Hum Genet 79(1): 31-40, 2006
  2. Hagège AA, et al.: Heart 97(2): 131-136, 2011
  3. Monserrat L, et al.: J Am Coll Cardiol 50(25): 2399-2403, 2007
  4. Chimenti C, et al.: Circulation 110(9): 1047-1053, 2004
  5. Namdar M, et al.: Am J Cardiol 105(5): 753-756, 2010
  6. Kampmann C, et al.: Orphanet J Rare Dis 10: 125, 2015
  7. Beck M, et al.: Mol Genet Metab Rep 3: 21-27, 2015
医療機関名称 富士宮市立病院
住所 〒418-0076 静岡県富士宮市錦町3-1
電話番号 0544-27-3151(代表)
医師名 院長/循環器内科 佐藤 洋(さとう ひろし)先生
ホームページ https://fujinomiya-hp.jp/外部サイトを開く