全身を包括的に診療できる施設の強みを、ファブリー病の診療にも活かしていきたい

  • 診療科遺伝診療
  • エリア大阪府和泉市

岡本 伸彦(おかもと のぶひこ)先生

地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 遺伝診療科 主任部長

岡本 伸彦(おかもと のぶひこ)先生

大阪府域の周産期医療・小児医療の基幹施設として

大阪母子医療センターは大阪府域の周産期医療・小児医療の基幹施設として、新生児期から小児期まで一貫した医療を提供しています。併設の研究所では、母と子に関わる疾病の原因解明と診断・治療・予防法の開発を目指して、様々な研究に取り組んでいます。

私は遺伝診療科で、ファブリー病を含む遺伝性疾患の診療と研究に携わってきました。当施設が位置する大阪府南部地域には遺伝性疾患に対応している施設が少ないため、大阪府外を含む周辺地域からの紹介患者を数多く診療しています。

また、当施設は「小児希少・未診断疾患イニシアチブ[Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases in Pediatrics;IRUD-P(アイラッドピー)]」のクリニカルセンター(地域拠点病院)でもあります。IRUD-Pとは、原因不明あるいは診断がついていない小児患者を対象に、最先端の機器を駆使してDNAを調べ、原因や診断の手がかりを探す全国規模の研究プロジェクトです。当施設ではかかりつけ医療機関からの、診断が難しい患者さんのご紹介を受け付け、原因不明・未診断疾患の特定に努めています。

ファブリー病はX連鎖性の遺伝形式をとるが、女性も発症する場合がある

ファブリー病は、ライソゾーム内に存在する加水分解酵素α-ガラクトシダーゼ(α-Gal)をコードする遺伝子(GLA)の変異を原因とする遺伝性疾患です。GLAの変異によりα-Galの欠損あるいは活性低下が生じ、基質である糖脂質グロボトリアオシルセラミド(Gb3)が組織・臓器に進行性に蓄積することによって全身に様々な症状が現れます。

ファブリー病の遺伝形式はX連鎖性です。X連鎖“劣性”の遺伝形式であれば、保因者であるヘテロ接合体の女性は発症しないことが多いのですが、ファブリー病は女性も発症する場合があることに注意を要します。症状の現れ方には幅があり、無症状・軽症のまま経過する方がいる一方、男性同様に重症化する方もいます。X染色体のランダムな不活性化が影響していると考えられています。

小児期の代表的症状は四肢末端疼痛

小児期に現れる代表的な症状の一つが四肢末端疼痛です。入浴や運動などで体温が上昇したときに、ヒリヒリ・ジンジンとした灼熱感を伴う痛みが手掌・足蹠に現れるのが特徴です。しかし、患児が痛みを訴えていても、原因がわからないまま「気のせい」として放置されたり、心身症の疑いで他科を紹介されたりして、診断が遅れてしまうケースがあると言われています。

小児期の症状・所見としては、そのほか、発汗障害(低汗症・無汗症)や被角血管腫、角膜混濁などがあります。また、成人期以降になると重要臓器へのGb3の蓄積が進行し、心疾患や腎疾患、脳血管疾患のリスクが高まります。ファブリー病を顕在化するためには、問診で既往歴・家族歴を詳細に聴き取り、ファブリー病の諸症状を過去に経験していないか、また、家系内に心不全や腎不全、若年性脳梗塞に罹患した方がいないかを確認することが重要です。

診療場面で欠かせない、遺伝カウンセラーの関わり

臨床症状や家族歴からファブリー病が疑われた場合、血液検体中のα-Gal活性測定によって診断を進めます。乾燥ろ紙血を用いたスクリーニングを実施している施設もあります。女性はα-Gal活性測定のみで診断を確定することが難しいため、遺伝子変異の有無を確認するために遺伝子解析の実施が考慮されます。当施設の研究所では様々な疾患の遺伝子解析を行っており、ファブリー病の診断を目的としたGLAの解析も施設内で対応可能です。

ファブリー病を含む遺伝性疾患の診療場面では、遺伝カウンセラーの関わりが欠かせません。ファブリー病の場合、以前は有効な治療手段がなく、たとえ診断できたとしても対応に苦慮していましたが、現在では酵素補充療法という治療法が確立しています。患者さんの将来の心・腎・脳卒中イベントを抑制するためにも、適切な遺伝カウンセリングを行った上で早期に治療を開始することが望まれます。当施設は専門外来を設けるなど、遺伝カウンセリングにも注力しています。

施設内で診療を完結できることが強み

ファブリー病の症状・所見は、手足の痛みや蛋白尿、あるいは心肥大など非特異的なものが多く、見過ごされがちであると思われます。少しでも疑わしい症例に出会った際は、積極的にファブリー病の鑑別をご検討ください。

私は小児の希少難治性疾患の診断と治療、中でも患者さんのQOLをいかに高め、長期にわたり維持していくかということに関心を持ち、この分野に進みました。ファブリー病のように治療法がある疾患を早期に顕在化することは、患者さんのQOLの維持・向上にも貢献するのではないかと思います。

当施設は、心臓、腎臓、脳神経をはじめ小児の全身を包括的に診療できる体制を備えており、施設内で診療を完結できるという強みがあります。こうした強みは、全身性の疾患であるファブリー病の診療にも活かせるものと考えています。

医療機関名称 地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター
住所 〒594-1101 大阪府和泉市室堂町840
電話番号 0725-56-1220(代表)
医師名 主任部長 岡本 伸彦(おかもと のぶひこ)先生
ホームページ https://www.wch.opho.jp/外部サイトを開く