ファブリー病が疑われる患者さんに出会った際は、小児、成人を問わずご相談ください

  • 診療科小児科 / 遺伝診療
  • エリア神奈川県川崎市

右田 王介(みぎた おおすけ)先生

聖マリアンナ医科大学病院 小児科 講師
遺伝診療部 副部長

右田 王介(みぎた おおすけ)先生

小児期医療から成人期医療へのトランジションが課題

私は小児科ならびに遺伝診療部に所属し、小児科ではファブリー病やポンペ病などのライソゾーム病を診療しています。また、遺伝診療部では臨床遺伝専門医として、ライソゾーム病を含む遺伝性疾患の患者さん、ご家族への遺伝カウンセリングなどにあたっています。ファブリー病は心臓や腎臓、神経系など全身の臓器に多彩な症状が現れる疾患であるため、他科連携が重要です。ファブリー病を診療する他の診療科へのアドバイスも私たちの役割です。

ファブリー病は小児期から成人期まで生涯にわたる管理が必要な疾患であるため、小児期医療から成人期医療への切れ目のない移行(トランジション)が求められます。ファブリー病患者さんのトランジションをいかに円滑に進めていくかも、私たち小児科の大きな課題になっています。

ファブリー病の早期発見に向けた方策の一つとして新生児スクリーニングがあります。国内のいくつかの地域・施設で取り組まれており、私たちもこれに着手したところです。また、国立成育医療研究センターなどで実施している、対象に成人を含んだファブリー病のハイリスクスクリーニングにも積極的に関わっています。

古典型ファブリー病の代表的な症状は四肢末端痛や低汗症・無汗症

私たち小児科医が主に診療する古典型ファブリー病の代表的な症状は、四肢末端痛です。入浴や運動により体温が上昇したときに手掌や足裏などに現れるのが特徴で、痛さのあまり外出を拒否したり、不登校になったりする患者さんもいます。低汗症・無汗症がみられる患者さんも多く、夏場には、これらは特につらい症状となります。古典型ファブリー病によくみられる症状・所見として、ほかに角膜混濁や消化器症状、易疲労感、被角血管腫、難聴などがあります。

成人期以降に発症する遅発型ファブリー病では、心肥大や不整脈、腎機能障害、脳血管障害など、重要臓器に障害が現れます。いずれの症状もQOLを低下させるため、早期に発見して適切な時期に治療を開始することが大切です。

家族歴聴取がファブリー病患者の顕在化に有用

ファブリー病の原因は、ライソゾーム内に存在する加水分解酵素α-ガラクトシダーゼ(α-Gal)の欠損や活性低下です。そのため、α-Gal活性測定が診断の基本です。検体として乾燥ろ紙血を用いる簡便な方法が普及し、私たちもスクリーニングに活用しています。また、蓄積する糖脂質グロボトリアオシルセラミド(Gb3)の尿中濃度やGb3の誘導体であるグロボトリアオシルスフィンゴシン(Lyso-Gb3)の血漿中濃度も、診断の参考になります。最近では、尿沈渣中のmulberry小体やmulberry細胞が、ファブリー病の早期発見に役立つ尿所見として注目されています。

ファブリー病はX連鎖性の遺伝形式をとります。ヘミ接合体の男性の場合はα-Gal活性測定でほぼ診断可能ですが、ヘテロ接合体の女性の場合はα-Gal活性にばらつきがあるため、α-Gal活性測定のみでは診断が困難です。ファブリー病の患者さんを顕在化させるためには、家族歴聴取により、家系内に心血管疾患や透析の患者さんはいないか、幼少時に四肢末端痛や低汗症・無汗症で悩んでいた方はいないかなどを確認することが何より重要です。家族歴・既往歴聴取によりファブリー病が疑われた場合はα-Gal活性を測定し、女性であればさらに遺伝子解析の実施を考慮します。

治療として酵素補充療法が確立

ファブリー病の病因にたいする治療として、α-Gal酵素製剤を2週間に1回点滴静注する酵素補充療法が確立しています。Gb3の蓄積による臓器障害が進行する前に治療を開始することが大切です。当科では、男児の場合小学校入学ころが治療への理解が得られるタイミングの一つと考え、酵素補充療法の開始をお勧めしています。
また、ファブリー病の新規治療法として、α-Galの構造を安定化させることにより酵素活性を上昇させるシャペロン療法があります。シャペロン療法の適応は、治療反応性のある遺伝子変異を伴う16歳以上の患者さんが対象になります。

ファブリー病を疑う目を持つことが大切

ファブリー病の潜在患者を顕在化させるために私が特に重要と考えているのは、家系検索です。当科でも家系検索を契機として数例の方がファブリー病と診断されました。外来では時間を割くことが難しいと思われますが、診断を疑う場合には、いずれかの時点で家系図の作成を検討していただきたいと思います。ファブリー病には確立した治療法があるため、診断されないまま何年も放置されるという事態は避けなければなりません。

ファブリー病の症状は多彩です。疑う目を持たなければ見逃してしまう可能性が高い疾患です。疑わしい患者さんに出会った際は、小児、成人を問わず是非ご相談ください。

医療機関名称 聖マリアンナ医科大学 小児科
住所 〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1
電話番号 044-977-8111(代表)
医師名 講師 右田 王介(みぎた おおすけ)先生
ホームページ http://www.marianna-u.ac.jp/hospital/外部サイトを開く