原因不明の左室肥大は、心ファブリー病によるものである可能性があります

  • 診療科循環器内科
  • エリア鹿児島県鹿児島市

樋口 公嗣(ひぐち こうじ)先生

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学 助教

樋口 公嗣(ひぐち こうじ)先生

心ファブリー病の研究・診療に豊富な実績

鹿児島大学病院は県内唯一の大学病院として難治性疾患に対する先進的な医療を提供し、基礎及び臨床研究を行っています。私は心臓血管内科で心筋症の専門外来を担当しており、その中でファブリー病の患者さんも診療しています。鹿児島大学病院はファブリー病、中でも心ファブリー病(心障害のみを認める非典型的なファブリー病)の豊富な研究・診療実績を有していますので、古典型のファブリー病の可能性がある患者さん、あるいは心疾患を治療中で心ファブリー病の疑いがある患者さんがおられましたら、遠慮なくご相談ください。

X染色体連鎖性の遺伝形式をとり、女性では症状の現れ方に幅がある

ファブリー病はライソゾーム病の一種であり、ライソゾーム加水分解酵素であるα-ガラクトシダーゼ(α-Gal)の活性が遺伝的に低下もしくは欠損し、その基質である糖脂質グロボトリアオシルセラミド(Gb3)が代謝されずに全身の組織・臓器に蓄積することによって発症する疾患です。X染色体連鎖性の遺伝形式をとり、男性の場合は全例にα-Gal活性の低下が認められますが、女性の場合は一対のX染色体のうちどちらが不活化されるかが個々の細胞で異なります。理論的には50%の細胞でα-Galの発現が欠損することになりますが、実際にはその割合は様々であり、α-Galを発現する細胞の割合は臓器ごとに異なると考えられます。そのため、女性ではα-Gal活性の低下が認められない例もあり、症状の現れ方にも幅があります。

左室肥大を有する日本人男性の約3%にファブリー病が認められたことを報告

ファブリー病における心障害では左室肥大を呈することが多く、また、刺激伝導系にGb3が蓄積することによる伝導障害(脚ブロックや房室ブロックなど)を伴う例も少なくありません。しかし、心エコーや心電図の所見からファブリー病を見分けることは困難です。

鹿児島大学病院では、左室肥大を呈する日本人男性の約3%(230例中7例)にファブリー病が認められたことを1995年に報告しました1)。それまで考えられていたよりもはるかに高い頻度であり、この知見を得て以降、私たちは、左室肥大を呈する症例では男女とも全例に酵素活性測定を実施しています。

酵素補充療法は早期に開始することが重要

ファブリー病に伴う左室肥大や伝導障害に対する治療は、他の要因によるものの場合と同様です。通常の薬物療法に加えて、不整脈に対してはペースメーカーなどの植込み型デバイスを使用します。

ファブリー病に対する原因治療としては酵素製剤を点滴静注する酵素補充療法が確立しています。ファブリー病を早期に発見し、臓器障害が発症する前、あるいは障害が軽度の時期から酵素補充療法を開始することが重要です。心障害や腎障害が進行している場合は、その進行抑制が主な治療目標となります。

心疾患で治療中の患者さんの中にファブリー病が潜在している可能性がある

過去に心疾患と診断され、近医でフォローされていた患者さんが、不整脈の悪化などにより当院に紹介されてきた際に、ファブリー病であることが判明することがあります。こうした例では、最初の診断時にファブリー病を発見していれば、酵素補充療法を早期に開始できていたかもしれません。心疾患で治療中の患者さんの中にファブリー病が潜在している可能性があることを、知っておいていただきたいと思います。

ファブリー病は特徴的な症状・所見が少ない疾患ですが、原因不明の左室肥大や腎障害合併例、幼少期に古典型ファブリー病の代表的な症状である四肢疼痛や低汗症・無汗症の既往がある患者さんに遭遇された場合は積極的にファブリー病を疑い、酵素活性測定の実施をご検討ください。

  1. Nakao S, et al.: N Engl J Med 333(5): 288-293, 1995
医療機関名称 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学
住所 〒890-8544 鹿児島県鹿児島市桜ヶ丘8-35-1
電話番号 099-275-5111(代表)
医師名 助教 樋口 公嗣(ひぐち こうじ)先生
ホームページ http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~intmed1/外部サイトを開く