少しでも疑わしい症例に遭遇したら、ためらうことなくご相談ください

  • 診療科循環器内科
  • エリア神奈川県横浜市 / 東京都新宿区

山川 裕之(やまかわ ひろゆき)先生

慶應義塾大学病院 循環器内科 講師
横浜市立市民病院 循環器内科 医長

山川 裕之(やまかわ ひろゆき)先生

ファブリー病の本邦と当院の現状、今後の診療方針

ファブリー病は、本邦において難病に指定されております。鹿児島大学のグループでは左心室肥大の男性230例中7例(3%)にファブリー病患者さんがいることを報告しています(Nakao S, et al.: N Engl J Med ;333(5): 288-293, 1995)。現在までに、横浜市民病院・慶應義塾大学では約10名の患者さんをファブリー病と診断し定期的に診察しております。その中で酵素補充療法を望まれた患者さんに対して加療を実施しております。
しかし、ファブリー病の認知度は今なお不十分であり、未診断・未治療の患者さんが相当数潜在していると考えられます。循環器内科だけではなく、小児科、腎臓内科、神経内科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科などの、様々な診療科と綿密に連携を行い、早期診断・早期治療に繋がるよう診察をしていきたいと考えています。また、ファブリー病の患者さんを生涯にわたって診ていけるような基盤を整えております。

原因不明の左室肥大では鑑別疾患のひとつとしてファブリー病の可能性を考慮

ライソゾーム病の一種であるファブリー病は、α-ガラクトシダーゼ(α-Gal)の欠損あるいは活性低下により、その基質であるグロボトリアオシルセラミド(Gb3)などのスフィンゴ糖脂質が分解されずにライソゾーム内に異常蓄積するX連鎖性の遺伝性疾患です。症状は様々な組織・臓器に及び、小児期では四肢末端痛や低汗症、被角血管腫など、壮年期以降では心肥大や不整脈、腎不全、脳血管障害などが現れます。私は主に、男性で小児期から症状を呈する古典型、壮年期以降に心臓に症状が限局した遅発型(心ファブリー)や女性で心臓に症状が現れている患者さんを診察しております。
ファブリー病を疑うポイントは、心エコーや心電図で左室肥大を認め、その原因が不明である場合は鑑別疾患のひとつとしてファブリー病の可能性を考慮します。一次検査としてはα-Galの酵素活性測定を実施し、ヘミ接合体である男性の場合は酵素活性低値が示されればほぼファブリー病と診断できます。一方、ヘテロ接合体である女性の場合は、ファブリー病であっても酵素活性が低値を示さないことがあります。そのため、二次検査として尿中や血中のGb3蓄積の確認、心筋生検や腎生検、遺伝子検査などを適宜行い、家族歴や既往歴も踏まえて判断します。最近では、maltese cross(マルタ十字)と呼ばれる重屈折性偏光像を示すmulberry cell(マルベリー細胞)や、mulberry body(マルベリー小体)を尿沈渣で確認することも、簡便なスクリーニング法として注目されています。

治療の重要性を根気強く伝えていくことが大切

我が国が指定難病として掲げているファブリー病は希少疾患であります。しかし、治療法が確立しているので、診断を可及的速やかに行うことが大事なことであります。
また、ファブリー病は、一般的に臓器障害が進行する前の早期から治療を開始する方が望ましいと言われております。そのため、私たちはファブリー病を有する患者さんに対しては左室壁厚12mm以上を治療開始の目安にしております。

ファブリー病の根本治療としては、酵素製剤を2週間に1回点滴静注する酵素補充療法が確立しています。自覚症状がない段階からの治療開始に同意が得られないケースや、通院が途絶えがちになるケースもありますが、治療の重要性を根気強く伝えていくことが大切です。

ファブリー病を放置すると、色々な臓器の細胞内に糖脂質の蓄積が進行し、将来的に深刻な臓器障害に至る可能性が高くなります。具体的には、心臓では、心肥大、不整脈、心不全などを起こす可能性が高くなります。また、腎臓では若年で透析導入となる方もいらっしゃいます。脳では、若年性の脳梗塞などを発症する方もいらっしゃいます。このようにならないためにも、早期に治療を開始すること、治療を継続することが非常に重要であるということ、患者さんに対して意識を持たせることが重要と考えます。

ファブリー病の早期発見に向けて

ファブリー病を早期に発見するため、心エコーや尿沈渣ではファブリー病を疑うべき所見を見逃さないよう留意するとともに、家族歴聴取では心肥大や透析導入、若年脳梗塞などの存在、既往歴聴取では小児期の四肢末端痛や低汗症の有無などを丁寧に確認するよう心掛けてください。慶應義塾大学病院は、ファブリー病専門外来(遺伝性心疾患の専門外来)の開設を契機として、ファブリー病診療を今まで以上に強化してまいりますので、気になることがあれば何でもご相談ください。ファブリー病の定期的な病勢評価にも対応いたします。少しでも疑わしい症例に遭遇したら、ためらうことなくご相談ください。

ファブリー病診療の拠点化を目指して

慶應義塾大学病院では、2018年5月よりファブリー病をはじめとする遺伝性心疾患の専門外来を本格的に始動します。ファブリー病は心臓、腎臓、脳、皮膚、眼、耳など全身の各所に症状が現れる疾患です。また、子供から大人までと年齢層も幅広い疾患となります。そのため、循環器内科、腎臓内科、神経内科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、小児科といった多くの診療科が連携して全身を評価し、治療を進めることが求められます。慶應義塾大学病院ではこれを実践しうる体制の構築を進めており、将来的にはファブリー病診療の拠点となることを目指しています。前にもお話しましたように、慶應義塾大学病院は、ファブリー病の患者さんを生涯にわたって診ていけるような基盤を整えております。

また、横浜市立病院でも同様な診療ができるように心がけております。

医療機関名称 慶應義塾大学病院 循環器内科
住所 〒160-8582 東京都新宿区信濃町35
電話番号 03-3353-1211(大代表)、03-5843-6702(循環器内科 医局)
医師名 講師 山川 裕之(やまかわ ひろゆき)先生
ホームページ http://www.hosp.keio.ac.jp/外部サイトを開く
慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000647.html外部サイトを開く

医療機関名称 横浜市立市民病院 循環器内科
住所 〒240-8555 神奈川県横浜市保土ケ谷区岡沢町56
電話番号 045-331-1961
医師名 医長 山川 裕之(やまかわ ひろゆき)先生
ホームページ http://yokohama-shiminhosp.jp/外部サイトを開く