小児のみならず成人の診療にも対応――年齢を問わず遠慮なくご相談ください

  • 診療科小児科
  • エリア千葉県千葉市

村山 圭(むらやま けい)先生

千葉県こども病院 代謝科 部長

村山 圭(むらやま けい)先生

先天代謝異常症や小児肝疾患の診療に注力

千葉県こども病院は、県内唯一の独立型の小児専門医療機関として、専門的な医療を必要とする疾患のある子どもたちの診断・治療を行っています。その中で私たち代謝科は、フェニルケトン尿症、尿素サイクル異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、ミトコンドリア病、ライソゾーム病などの先天代謝異常症や小児肝疾患の診療に力を入れています。現在、ライソゾーム病全体では20~30人の患者さんの治療に当たっており、そのうち約2割がファブリー病の患者さんです。

組織・臓器への糖脂質の蓄積が全身に様々な症状をもたらす

ファブリー病は、ライソゾームに存在する加水分解酵素α-ガラクトシダーゼ(α-Gal)の欠損または活性低下により、主な基質である糖脂質グロボトリアオシルセラド(Gb3)が細胞内に蓄積することによって発症するX連鎖性遺伝性疾患です。Gb3は主に血管内皮細胞や平滑筋細胞、汗腺、心筋、腎臓、自律神経節、角膜などに蓄積しやすいため、これらの組織・臓器に蓄積したGb3が全身に様々な症状をもたらします。

ファブリー病は、幼小児期から症状が全身のさまざまな臓器・器官に現れる古典型と、成人以降に発症し、比較的臓器特異的な症状を呈する遅発型に分類されます(心型亜型、腎型亜型とも呼ばれます)。幼少期から現れやすい主な症状として、四肢疼痛、低汗症、被角血管腫が挙げられ、中でも四肢疼痛は学童期の患者さんにとって非常につらい症状となります。四肢の激しい痛みによりファブリー病が疑われて当院に紹介された男児例は、悲鳴を上げるくらいの痛みに苦しまれていました。ファブリー病に伴う四肢疼痛は、夏季や入浴時など、体温の上昇時に痛みが増すのが特徴です。低汗症も特徴的な症状のひとつですが、自覚されないことが多いため、問診で聴き取ることが重要です。また、成人の症例としては、蛋白尿を指摘され、腎生検にてファブリー病と診断された症例を経験しています。

ファブリー病(男児)等を対象とした新生児スクリーニングを開始

臨床症状からファブリー病が疑われた場合、α-Galの活性を測定することによって診断を行います。ヘミ接合体の男性は活性低値が確認されればほぼファブリー病と診断できますが、ヘテロ接合体の女性は症状を有していても活性が正常値を示すことがあるため、遺伝子検査等の結果も参考にして診断します。最近では、Gb3の誘導体であるグロボトリアオシルスフィンゴシン(Lyso-Gb3)の血漿中濃度がファブリー病を示唆する鋭敏な指標として注目されています。

当院は今年度、千葉県、埼玉県の複数の施設とともに、国立成育医療研究センターの協力の下、ファブリー病(男児)等を対象とした新生児スクリーニングを開始する予定です。県内の産科施設での出生児を対象として、同意を取得した上で検査を実施します(検査は有料)。検査は、乾燥ろ紙血検体で低侵襲かつ簡便に実施可能です。ファブリー病の新生児スクリーニングの有用性を検証し、早期発見に貢献したいと考えています。

また、ファブリー病は遺伝性疾患であるため、家族歴調査や家系分析が欠かせません。現在治療中の患者さんでこれらが十分になされていないケースもありますが、未診断の患者さんを治療に結びつけるために、家族歴を丁寧に聴取するとともに家系分析を積極的に実施していただきたいと思います。家族歴調査・家系分析を含む診断の過程、および治療導入に際しては、遺伝カウンセラーも重要な役割を果たします。

酵素補充療法は症状進行前の早期に開始することが望ましい

ファブリー病の治療法としては、酵素製剤を2週間に1回点滴静注することにより病態の改善を図る酵素補充療法があります。症状が進行した状態では治療効果が得られにくい場合があるため、早期の治療開始が望ましいと考えられます。また、遅発型では心臓や腎臓が障害されますが、自覚症状に乏しいため治療導入・継続に困難を伴うことがあります。そうしたケースでは、未治療のまま放置すると心不全や腎不全、脳卒中といった深刻かつ不可逆な病態に至るリスクがあることなど、疾患の全体像を詳細に説明するよう努めています。検査と治療の各段階で、その意義を患者さんにご理解いただくことが重要です。

小児から成人まで、地域全体でカバーできる診療体制の構築が必要

ファブリー病は小児だけの疾患ではありません。皮膚科や耳鼻科、循環器内科、神経内科などの様々な診療科で遭遇する可能性がある疾患です。多科・多職種の連携によって、あるいは施設間ネットワークの形成によって、小児から成人まで地域全体でカバーできる診療体制を構築する必要があります。当院は小児のみならず成人の診療にも対応していますので、ファブリー病が疑われる患者さんがおられましたら、年齢を問わず遠慮なくご相談ください。患者さん1人1人に適切な環境で治療を受けていただけるよう尽力することが、私たちの務めであると考えています。

医療機関名称 千葉県こども病院 代謝科
住所 〒266-0007 千葉県千葉市緑区辺田町579-1
電話番号 043-292-2111(代表)
医師名 部長 村山 圭(むらやま けい)先生
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