原因不明の尿蛋白・尿潜血はファブリー病を疑う重要な契機

  • 診療科腎臓内科
  • エリア兵庫県神戸市

藤井 秀毅(ふじい ひでき)先生

神戸大学大学院医学研究科 腎臓内科 腎・血液浄化センター 講師

藤井 秀毅(ふじい ひでき)先生

糖脂質グロボトリアオシルセラミド(Gb3)の臓器・組織への蓄積が、全身に様々な障害を引き起こす

私が初めてファブリー病の患者さんを診療したのは2000年代初頭のことでした。以来、コンサルテーションを含めて十数人の患者さんを診療してきました。2017年現在も当科全体で複数名のファブリー病患者さんを治療中であり、得られた知識と経験は医局スタッフで共有しております。

ファブリー病はα-ガラクトシダーゼ(α-Gal)という酵素の欠損あるいは活性低下により、本来であればα-Galにより分解されるはずの糖脂質グロボトリアオシルセラミド(Gb3)が全身の様々な臓器・組織に蓄積することで発症するライソゾーム病の一つです。小児期に現れる典型的な症状は四肢末端痛、被角血管腫、無汗症・低汗症で、徐々に蓄積したGb3が心・腎・脳血管に障害を及ぼすこととなります。

Gb3は進行性に蓄積するため、早期に酵素補充療法を開始することが大切

ファブリー病診断の基本はα-Gal酵素活性の測定と遺伝子解析です。当科では原因不明の腎機能障害を呈し、臓器障害の家族歴を有する方では積極的にファブリー病を疑い、酵素活性を測定しています。ファブリー病はX連鎖性の遺伝性疾患であり、ヘテロ接合体の女性の場合は酵素活性の明らかな低下が認められないことがあるため、遺伝子検査の実施も考慮します。腎生検や心筋生検におけるGb3の蓄積を確認することも、確定診断の根拠となります。

ファブリー病の治療法としては、α-Gal酵素製剤を2週間に1回点滴静注する酵素補充療法が確立しています。Gb3は進行性に蓄積するため、早期に酵素補充療法を開始することにより腎機能障害の進行抑制を目指すことが大切です。腎代替療法開始後のファブリー病患者さんに対しても酵素補充療法が必要かと問われることがありますが、たとえ腎臓の救済は困難であっても、他臓器の障害の進展抑制やイベント回避を目指す上では重要であると考えられます。また近年、α-ガラクトシダーゼの立体構造を安定化することによって本来の酵素の働きを促進するシャペロン療法が認可されています(治療反応性のある遺伝子変異を伴う16歳以上の患者さんが対象)。

ファブリー病に伴う腎機能障害は自覚症状に乏しい一方、酵素補充療法は2週間に1回の通院を必要とします。患者さんには治療に対するモチベーションを維持していただくため、将来的なイベント発症リスクを繰り返し治療から脱落しないように伝えるよう努めています。

潜在している患者さんを発見し、治療につなげるために

兵庫県を中心に私が実施した1,024人の透析患者さんを対象に実施したスクリーニング研究では、ファブリー病の有病率は0.29%(男性 0.16%、女性0.5%)でした1)。現在透析治療を受けている患者さんや腎機能障害をお持ちの患者さんの中に、ファブリー病が潜在している可能性があります。

ファブリー病を早期に発見する上で重要な役割を担って頂くのが、プライマリケアの先生方です。尿蛋白や尿潜血といった尿検査値異常が認められるにもかかわらず原因が定かでない場合は、その所見がファブリー病早期発見の第一歩である可能性がありますので、ためらうことなくご紹介・ご相談ください。

また、家族歴も早期発見の手がかりになります。私が出会ったある患者さんは、健康診断で不整脈を指摘され、精密検査により初期の心肥大が発見されました。家族歴聴取にてご家族にファブリー病の方がいることが判明したため同疾患が強く疑われて当科受診となり、診断に至ったのです。心・腎・脳血管等に障害があり、その原因が不明である患者さんを診療しておられる場合は、家族歴を詳細に確認することをご検討ください。

ファブリー病には、治療法が存在します。一人の患者さんの診断から、そのご家族・親戚に潜在する患者さんを治療につなげられる可能性もあります。当科では循環器内科をはじめ皮膚科、眼科、神経内科、病理診断科と連携を密にし、全身を幅広く診療する体制を整えていますので、ファブリー病が疑われる患者さんがおられる場合は積極的にご紹介ください。ファブリー病の早期発見、早期治療に向けて協力していきましょう。

  1. Fujii H, et al.: Am J Nephrol 30(6): 527-535, 2009
医療機関名称 神戸大学大学院医学研究科 腎臓内科 腎・血液浄化センター
住所 〒650-0017 兵庫県神戸市中央区楠町7-5-2
電話番号 078-382-5111(代表)
医師名 講師 藤井 秀毅(ふじい ひでき)先生
ホームページ http://www.med.kobe-u.ac.jp/kidney/外部サイトを開く