ファブリー病Q&A 循環器編 vol.06「心ファブリー病」

ファブリー病 Q&A

ファブリー病に関して実際に先生方より寄せられた質問に、ファブリー病のエキスパートの先生にご回答・ご解説いただきました。

循環器編 vol.06 心ファブリー病

Q.ファブリー病の遅発型である心ファブリー病は、どのようなケースで疑うべきでしょうか。また、心電図、心エコー、心臓MRIなどによる特徴的な所見、さらに診断における心筋生検の意義についても教えてください。

今回のエキスパート
高知大学医学部老年病・循環器内科学 講師
久保 亨 先生

A.中年以降に診断された心肥大例では特に注意が必要です。


心亜型ファブリー病は、四肢疼痛や発汗障害(無汗症・低汗症)、腎機能障害などの典型的なファブリー病の全身症状を欠き、心肥大を主症状とするファブリー病の遅発型です。鹿児島大学の報告1)では「心肥大男性患者の3%が心亜型ファブリー病であった」とされ、その後の海外の報告も心肥大患者のなかに少なからず本疾患が存在していることを示しています。
原因不明の心肥大を有する患者では、まず心ファブリー病を鑑別疾患として挙げる必要があると思われます。また、原因不明の心肥大患者は肥大型心筋症と診断されていることが多いため、すでに肥大型心筋症と診断されている患者においても再度心ファブリー病を鑑別に挙げておく必要があります。特に中年以降に診断された心肥大例は心ファブリー病を疑うべきだと思います。

心ファブリー病に特徴的な所見としては、心電図によるPQ時間の短縮(ファブリー病患者の約15%にみられる)2)、心エコーによる左室壁のびまん性肥厚、心臓MRIによるガドリニウム遅延造影(心筋線維化)が挙げられます。また、心筋生検では、ヘマトキシリン-エオジン染色による心筋細胞の細胞質の空胞変性様所見や間質の線維化など特徴的な所見が得られます。これらの所見がみられる場合には、ファブリー病を疑うべきだと考えます。

●心臓MRI所見

心肥大を有するファブリー病患者の約半数にガドリニウム遅延造影像が認められるとの報告2)があります。一般的には、心基部の後側壁に遅延造影像が出現し、病状の進行とともに他の領域にも遅延造影像が広がります。これに対して、心室中隔を中心とした遅延造影は、肥大型心筋症に多くみられるパターンだと言えます。

●診断における心筋生検の意義

肥大型心筋症では心筋細胞肥大や心筋細胞の錯綜配列が認められ、心ファブリー病ではヘマトキシリン-エオジン染色により心筋細胞の細胞質の空胞変性様所見や間質の線維化を認めるなど、肥大型心筋症と心ファブリー病の心筋病理組織像は異なります(図)。この点からは、心筋生検は重要な診断法であると考えられます。ただし、心筋生検ではある一定の確率で合併症を生じるリスクがあるのも事実です。したがって一般的には、まずは心臓外病変の評価も含めた非侵襲的検査を行うことで、心ファブリー病の診断に近づけることがよいように思われます。
原因不明の心肥大患者において、男性患者であればα-ガラクトシダーゼ酵素活性測定でほぼ診断が可能です。女性の場合は診断が難しく、α-ガラクトシダーゼ酵素活性値が正常でもファブリー病を否定できないため、必要に応じて心筋生検の施行が有用であると考えます。

図

(竹中俊宏、鄭忠和、循環器症状 衛藤義勝 責任編集.ファブリー病UpDate,p80,診断と治療社,2013)

1)Nakao S, et al. N Engl J Med. 333(5): 288-293, 1995

2)Moon JC, et al. Eur Heart J. 24(23): 2151-2155, 2003


※ この記事は医師専用コミュニティサイト「MedPeer」内のコンテンツ「症例相談(Meet the Experts)」での質問・回答をもとに作成しております。


男性でファブリー病を疑ったら、
まずα-ガラクトシダーゼ活性測定検査の実施を。


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