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Consonance〜統合失調症治療を考える〜

Eyes 〜精神科医療、さまざまな目〜

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VOL.28 作業療法士から「早期介入・早期治療を目指した、若年層へのデイケア」

東邦大学医療センター大森病院に、早期介入・早期治療を目指したデイケア「イル ボスコ*」がある。15〜30歳までのARMS*もしくは初発の統合失調症を対象とし、利用期間を1年に限定している。スタートして1年あまり。手応えや課題、若年層への接し方などを、リーダー的存在のスタッフ、羽田氏に伺った。(編集部)

* イル ボスコ:il Bosco(イタリア語で「森」)
* ARMS(アームス):At Risk Mental State(精神病罹病危険状態)

作業療法士 羽田舞子氏
作業療法士
羽田舞子
東邦大学医療センター 大森病院「イル ボスコ」
●住 所: 〒143-8541 東京都大田区大森西6-11-1
tel. 03-3762-4151
http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/mentalhealth/
早期援助の手応えを実感

2007年5月にスタートし、1年少し経ちました。ARMSもしくは初発統合失調症の方を対象にデイケアを行っています。平均年齢は21歳と若く、通常のデイケアとはだいぶ勝手が違います。また、「精神科デイケア」という言葉自体への偏見はまだありますし、試行錯誤の日々ではありますが「(早期援助は)意味のあることなんだ」と手応えを実感しています。

現在、登録している方は24名で、1日10名ほどが利用されています。利用期間を原則として1年に設定していますので、開設当初から利用された方はもう卒業されましたが、ほとんどの方が希望を実現されました。こういった関わりを経て、早い時期の積極的なアプローチが社会機能の維持・向上や予後に大きく影響することを実感し、早期介入の必要性を改めて肌で感じました。

復学できた利用者

ARMSの女性(20歳)でした。初めの頃は思考障害が強く、自分の生活をほとんど組み立てられませんでした。プログラムにもまったく出られず、面接に来てすぐ泣いて帰ってしまうのです。通っていた専門学校も休学してしまいました。ですがそのうちに、ここには同年代の利用者さんたちがいるので「学校をやめて体験できなかったことが、もう一度ここでできる」と、一所懸命通うようになりました。徐々にプログラムにも参加できるようになり、自信もつき始め、アルバイトとボランティアを始めました。体調を崩し倒れたりもしたのですが、つらいときはここに来たり、アルバイトの合間に電話をかけてきたりして、来年は復学する予定だそうです。

他にも復学を目指す方は多くいらっしゃいます。同じくARMSの19歳の女性は、大学を1年休学してデイケアを利用し始めました。もともと交友関係をつくるのが苦手な方で、こちらに来た当初も「私は一生、一人で生きていきます」と、頑なでした。ですが少しずつ認知機能トレーニングやレクリエーションなどを通して、「人っていいな」と感じられるようになったそうです。結局、1年の休学の後、今は友だちもできてキャンパスライフを楽しみ、試験でトップを取ったりしているそうです。

こういった「卒業生」を見ると、本当によかったなと思います。嬉しいですね

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若年層・早期を対象にする難しさ

若年層・早期を対象としていますので、機能の低下や障害は顕著ではありませんが、だからこそ、その方が抱えている問題を捉えにくいことがあります。どういうことが起こっているのか、さらにそれが早期だからなのか、思春期だからなのかも判断が難しい。ですから常に「正確なアセスメントを」と、念頭に置いています。

それから、ここに通ってもらうモチベーションの維持も簡単ではありません。ひどく調子が悪かったり、社会から分断されている方は少ないので、モチベーションを保てず、来なくなってしまう方もいるんです。例えば引きこもりの方などは、家でゲームをしている分には機能の障害も目立たず、対人関係も必要もない……さらに親御さんもまだ若いですから、自立や就労を気にすることもない。そんな方が何のためにここに通うのか。「ここに来ればよりよい状態になるんだ」と、どうやって伝えていくのかも難しい課題です。

プログラムの特色

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通常のデイケアでは、同じプログラムを繰り返しているところが多いと思います。統合失調症の方は変化に弱いので、そのほうが安心ですから。ですがここではあえて固定することにこだわっていません。障害も軽く、まだ若いためにある程度のことはこなせますから、飽きてしまうんです。ですから刺激になるよう、なるべく変化をつけています。

プログラムは生物学的アプローチと、心理社会的アプローチの2つを軸に組み立て、次の3つのカテゴリーに分けています。

1) 創作や料理、スポーツなどの作業プログラム
2) 会議やSST(社会技能訓練)、集団精神療法などの言語的プログラム
3) ワークシートやゲームによる認知機能トレーニング

認知機能トレーニングは毎日15分、全員で行っています。点数をつけてポイントをためて賞品を渡したり、ゲーム性を持たせて飽きないようにしています。

人気のあるプログラムですか。若いからということもあると思いますが、互いに影響されやすいですね。誰かが「つまらなくない?」と言い始めると、全体がそういう雰囲気になることも多いですし、その逆もあります。ですからスポーツが人気のときもあれば、創作ブームが到来したり、認知機能ゲームが急に盛り上がることもあるし。そこにどんな特徴があるかはなかなか掴みにくく、スタッフは頭を抱えています(笑)。

さらに、思春期には自分でも上手くコントロールできない衝動性があります。これをどう発散させたらいいのかを考え、部活動を始めました。私たちスタッフが顧問になり、音楽部と運動部、文芸部があります。練習も定期的に行い、運動部は区の卓球大会に出場しました。

作業療法士として

生活すべてが「作業」だと思うのです。ですから障害されている部分を探すのではなく、できている部分をたくさん見出したいですね。それを最大限に生かして、たくさんの「できること」をサポートしたい。そんな関わり方を心がけています。

今後は……

1年という利用期間を見直し中です。人それぞれ回復のペースがありますから、1年間で何とか結果を出そうとすると、苦痛になってしまう方もいらっしゃいますし。

当初1年としたのは、発症からあまり時間が経っていない治療の臨界期の内に何とかアプローチしたいという考えからです。それが1年でいいのか2年がいいのか、さらなる微調整が必要だと感じています。今後は構造的・統計的なデータを蓄積し、方向性をさらに見出せたらと思います。


『CONSONANCE〜精神科治療のトレンド〜』2008 autumn(通巻第28号)
(ライフサイエンス出版(株) 2008年11月21日発行)より

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